遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで①
事例
精神薄弱者更生施設で園生が行方不明となり、12日後に煙突内部で遺体で発見された
事実
園生は、施設の外へ出、施設の屋上の煙突開口部に通じるはしごを上って煙突内部へ転落した。煙突開口部は、ベニヤ板で覆っていた。警察官による捜索でも、煙突開口部からの転落は予想されず、捜索がなされなかった。
施設の責任を否定
園生が、煙突内部へ入るなど異常かつ危険な行動に及ぶことを予見させるような兆候がなかった。一般に煙突内に人が入り込むことは考えられない。煙突内に落下することは予見不可能(千葉地裁平11.3.29判決)
事例
デイサービスに通所していた高齢者が失踪し、1ヶ月後砂浜で死体となって発見された
事実
2名の職員しかおらず、両名とも他の業務に従事していた。担当高齢者は9名。無断外出したのは、失語を伴う重度の老人性認知症の人。外出前に靴を採ってこようとしたり、廊下でうろうろしているのを職員が目撃。身体的には健康。玄関は施錠。裏口には開閉時にブザーが鳴る仕組み。しかし、84センチの高さの窓に施錠をしていなかった。
施設の責任を肯定
施設を出て行くことは予見できた。法令で定められたサービスの提供が職員にとって過大な負担となるようなケースでも、注意義務は軽減されない。
(静岡地裁浜松支部平13.9.25判決)