交通事故 25 後遺障害③ PTSD(心的外傷性ストレス障害)
1 警備員による誘導に従って、車両を運転した結果、交通事故を起こした場合に、過失は否定されるか?
岡山地判平16.6.13は、「道路工事が行われている際に警備員が車両の誘導をしている場合,道路交通法上,当該警備員の指示に法的な根拠が与えられているわけではない。また現実にも,信号機の表示する信号や警察官等による交通整理(道路交通法6条)と何ら資格を有さない警備員による車両の誘導との間には,これに対する信頼が質的に大きく異なる。・・・警備員の指示に従った車両の運転者に、安全確認義務が免除されるわけではない。」として,工事会社の警備員の指示に従った結果事故が起こったケースについて,運転者の過失を認めています。ですから、警備員の誘導に従ったことが無過失になるわけではありません。
2 警備員の交通誘導に従って、車両を運転した結果、車両同士が接触あるいは衝突し、被害を生じさせた場合の責任関係はどうなるか?
例えば、
甲車の運転手甲の過失が3割、
乙車の運転手乙の過失が4割、
警備員の過失が3割
という過失割合の場合、甲は損害額のうち、いくらを誰に請求できるのでしょうか?
最判平成15.7.11は,このような場合は、絶対的(加算的)過失相殺という方法による過失相殺をするとして、上記の例では、甲は、損害額の100万円から、自己の過失割合分3割を引いた残りの70万円について、乙と警備員あるいは警備会社に対し請求することを認めています。
甲からみると、この交通事故は、乙と警備員の共同不法行為によって引き起こされたと考えることができますので、乙と警備員あるいは警備会社の過失分を合わせたもの(7割)については、両者に対し(不真正)連帯責任の請求が出来るということです。
この場合で、乙にも、例えば80万円の損害が生じているときは、乙は80万円のうち、自己の過失分4割の引いた残りの48万円について、甲と警備員・警備会社に対し、請求することができる(甲と警備員とは不真正連帯債務が生ずる)ことになります。