不動産 公図の歴史
1売主や仲介業者の、重要事項告知義務違反はあったが、その違法と買主の損害との間に因果関係が認められない、とされた事案
東京地裁平成13.9.26判決は、
継続的に進んでいる地盤沈下をしている宅地とその上に建築されている建物を売却した売主とそのことを認識していたと見られる仲介業者には、地盤沈下は極めて重要な事柄なので、これを購入しようとする者に告知すべき義務があったのに、これらの者は故意に買主に告げなかった、とその違法性を認めましたが、購入した買主は、売買後すぐにそこに移り住み6年半もそこで生活し、その後もその宅地建物を所有していること、地盤沈下問題を考慮せれば本件不動産の価格は不相当であったことや、その適正金額についての主張、立証がないので、買主が取得した本件不動産とそのために支出した金額とは基本的には対価関係があったものと推定する、として、買主の損害賠償の請求を棄却しました。
2これは、なにかがおかしい
この判決は、地盤沈下は極めて重要な問題であること、それを故意に告知しなかった売主や仲介業者には告知義務違反の不法行為責任があると判示しながら、買主が取得した本件不動産とそのために支出した金額とは基本的には対価関係があったものと推定する、と言っているのです。買主は地盤沈下を知らないで不動産を購入し、売主や仲介業者は故意に地盤沈下の事実を隠して不動産を売っているのだから、地盤沈下のあることを織り込んだ金額で売買契約が結ばれたというのは、実におかしい話しではあるのですが、買主が、損害について具体的に主張立証をしていないこの件では、やむを得ない判決でしょう。