遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで①
1 自白の価値
「自白は証拠の王様」という言葉もあります。
被告人を有罪とする証拠で、最も効果的なものが「自白」だという意味です。
科学捜査が十分にできなかった時代は、犯人捜しは困難を極めたものと思われます。そのような中で、「私がやりました」と自白する者が現れると、その者を有罪とすることは困難ではありません。
犯人自らが罪を自白したという事実は、裁判官も安心して有罪判決を出しうる根拠になったことでしょう。
このような時代は、まさに、「自白は証拠の女王」であり「証拠の王様」であったのです。
2 拷問への誘惑
しかし、自白に証拠としての大きな価値を認めると、捜査機関は、自白を得るため、被告人に対し、脅迫、拷問などに陥りやすく、えん罪を有無危険も大きいものがあります。
現在はどこの国も、拷問は禁止していると思われますが、我が国も、憲法38条1項で「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」と規定し、2項で「強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。」と定め、さらに3項で「何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。」と定めて、拷問の禁止のみならず、自白以外に証拠がない場合は、有罪にできないとしているのです。
3 しかし、それでも
しかし、それでも、被告人の自白は有罪判決の有力な証拠であることには変わりはないと思います。