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相続 171 遺言の解釈⑥ 実子でない者を実子として戸籍の届出をした場合の、遺言に書いた「相続人」の解釈

菊池捷男

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1 実子でない者は相続人にはなれない
実子でない者を実子として戸籍の届出をしても、実子ではなく、また実子の届出が養子縁組になるものではないため、養子でもなく、したがって、相続人にはなれません。
そうであれば、遺言者Aが実子がいなかったために兄夫婦の子Bをもらいうけ、実子として戸籍の届出をしたケースで、次のような遺言文言を残した場合、この遺言で言う「相続人」とは誰を指すのでしょうか?

2 遺言文言
遺言者は、法的に定められたる相続人をもって相続を与える。

3 最高裁平成17.7.22判決は、遺言書に書かれた「相続人」はBを指すと判示しました。その理由は、次のとおりです。
遺言を解釈するに当たっては,遺言書の文言を形式的に判断するだけでなく,遺言者の真意を探究すべきであり,遺言書が複数の条項から成る場合に,そのうちの特定の条項を解釈するに当たっても,単に遺言書の中から当該条項のみを他から切り離して抽出し,その文言を形式的に解釈するだけでは十分でなく,遺言書の全記載との関連,遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して,遺言者の真意を探究し,当該条項の趣旨を確定すべきである(最高裁昭和58.3.18判決)。
記録によれば,Aは,妻との間に子がなかったため,兄夫婦の間に出生したBをA夫婦の実子として養育する意図で,BにつきA夫婦の嫡出子として出生の届出をしたこと,Bは学齢期に達するまで,兄夫婦の下で養育され,その後,A夫婦に引き取られたが,上告人が上記の間兄夫婦の下で養育されたのは,戦中戦後の食糧難の時期であったためであり,Bは,A夫婦に引き取られた後Aが死亡するまでの約39年間,A夫婦とは実の親子と同様の生活をしていたことがうかがわれる。そして,Aが死亡するまで,本件遺言書が作成されたころも含め,AとBとの間の上記生活状態に変化が生じたことはうかがわれない。以上の諸点に加えて,本件遺言書が作成された当時,Bは,戸籍上,Aの唯一の相続人であったことにかんがみると,法律の専門家でなかったAとしては,同人の相続人はBのみであるとの認識で,Aの遺産・・・・・はすべてBに取得させるとの意図の下に本件遺言書を作成したものであり,同4項の「法的に定められたる相續人」はBを指し,「相續を与へる」は客観的には遺贈の趣旨と解する余地が十分にあるというべきである。原審としては,本件遺言書の記載だけでなく,上記の点等をも考慮して,同項の趣旨を明らかにすべきであったといわなければならない。ところが,原審は,上記の点等についての審理を尽くすことなく,同項の文言を形式的に解釈したものであって,原審の判断には,審理不尽の結果,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるというべきである。論旨は理由があり,原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れない。そして,更に審理を尽くさせるため,同部分につき本件を原審に差し戻すこととする。

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菊池捷男(弁護士)

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