遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで①
1 遺産分割の方法としての換価分割
これは可能です。本コラム72換価分割で解説したとおりです。
2 換価分割遺言
家庭裁判所の審判でできる換価分割が、遺言でできないわけはありません。
3 遺言文例
第1条 遺言者の有する下記財産を換価し、その換価金から遺言者の一切の債務を弁済し、遺言執行に要した費用並びに遺言執行者への報酬を控除した残金を、次のとおり配分する。
妻に1/2、長男に1/4、長女に1/8、長男の妻に1/8
第2条 遺言者は、この遺言の執行者として、次の者を指定する。
第3条 遺言執行者への報酬を次のとおり定める。
4 注意点
配分先を特定しないで、遺言執行者に、財産を換価した後は任意の者に任意の金額を配当することを委託しただけの遺言は、内容が確定していないので無効だとした判例(大審院昭和14.10.13)がありますので、換価金の配分基準を明確に書かなければなりません。
また、換価金から遺言者の債務を控除したら残余金がなくなり、相続人や受遺者に1円も配分できない換価分割遺言は、遺言をもってするべき処分行為に該当しないので無効になります(大審院大正6.7.5判決)。