遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで①
1 信託
信託(trust)とは、委託者Aと受託者Bとの間に、AからBに特定の財産を譲渡するとともに、当該財産を運用・管理することで得られる利益を、受益者Cに与える旨を約束すること、およびそれを基礎として構築された法的枠組みを意味します。
ここでは、A(委託者 trustor)、B(受託者trustee)、C(受益者beneficiary)の3者が登場します。
2 遺言者が、未成年の子の教育や生活資金を、信託の方法で、確保したいと考えた場合の信託の内容
⑴ 信託の目的 委託者Aが、特定の財産、例えば特定の賃貸用マンション(「信託財産」といいます)を受託者に譲渡し、受託者はこれを管理運用して、Aの子に教育と生活の資金を与える。
⑵ 受託者 特に制限はありません。近親者や信託銀行を受託者にする場合が多いと思われますが、予め、受託者に信託を引き受けてもらえるかを確認していた方が良いでしょう。
⑶ 受益者 特に制限はありません。未成年の子、老齢の親、配偶者など身内の者が多いと思われますが、他人でもかまいません。
⑷ 信託期間 未成年者が一人で管理できるまで、など事情に応じて設定できます。
⑸ 信託終了の際の権利帰属者 受益者などが多いでしょう。
⑹ 管理に必要な事項
① 不動産の場合、所有権移転登記及び信託登記手続をすること。
② 賃料収入から受益者にいくら支払うかなどを定めます。例えば、未成年の子が大学を卒業するまで、毎月30万円ずつ支払うなどを決め、安心して未成年の子が生活し、学業に打ち込めるようにするのです。無論、不時の出費を要する場合の取り決めなどを決めておくことができます。
③ 期間満了時の清算に関する事項など、例えば、収益金から諸経費や信託報酬を控除した残額を受益者に一時に支払うなどを定めるのです。
⑺ 信託の報酬
収益の一定割合を報酬とするなどがあります。
3 遺言事項
第1条 遺言者は、遺言者の有する次の不動産につき、次のとおり信託する。
以下は前記2の⑴ないし⑺を書く。
第2条 ・・・
第3条 遺言者は、本遺言の遺言執行者として次の者を指定する。