遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで①
1 負担付き相続
【遺言文例】
一 私は、長男が適宜の方法で妻の存命中妻に必要な介護をすることを長男の負担として、全財産を長男に相続させる。
二 私は、次の者を遺言執行者に指定する。
住所・・・
氏名・・・
生年月日・・・
三 遺言執行者には、長男がこの遺言に従い妻の介護を十分にするよう監督することを求める。長男は、最低月1回は妻の介護状況を遺言執行者に報告し、遺言執行者から請求があれば、いつでも妻の介護の内容、それにかかった費用を遺言執行者に報告をしなければならない。
四 遺言執行者並びに他の相続人は、長男が負担した義務を履行しないときは、相当の期間を定めてその履行の催告をなし、それでも長男が履行をしないときは、その負担付相続に係る遺言の取消しを家庭裁判所に請求しなければならない。
2 負担付き相続の意味
負担付き相続とは、相続人に対する負担付き遺贈と同じものですので、本連載コラム「相続 38 負担付き遺贈」をご覧下さい。
3 遺言事項四を書いた理由
負担付き遺贈や負担付き相続を受けた者が「負担」を履行したかどうか明確でない場合が多く、また、負担付き遺贈や負担付き相続を民法1027条により取り消すことが、遺言者の意思に適う保証はありません。そこで、負担つき遺贈や相続を取り消すかどうかは、家庭裁判所が、遺言者の意図がどこにあるかを考え、判断します。
そこで、裁判所の判断の方向付けをする意味と、負担付き遺贈や負担付き相続を受ける者(ここでは長男)に対し、遺言者の強い意志を明確にしておく意味から、遺言事項四項を書いたものです。