遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで①
最高裁昭和33.7.25判決は、「およそ心神喪失の常況に在るものは、離婚に関する訴訟能力を有しない、また、離婚のごとき本人の自由なる意思にもとづくことを必須の要件とする一身に専属する身分行為は代理に親しまないものであつて、法定代理人によつて、離婚訴訟を遂行することは人事訴訟法のみとめないところである。同法四条(現行法:11条)は、夫婦の一方が禁治産者(現行法:成年被後見人)であるときは、後見監督人又は後見人が禁治産者のために離婚につき訴え又は訴えられることができることを規定しているけれども、これは後見監督人又は後見人が禁治産者の法定代理人として訴訟を遂行することを認めたものではなく、その職務上の地位にもとづき禁治産者のため当事者として訴訟を遂行することをみとめた規定と解すべきである。離婚訴訟は代理に親しまない訴訟であること前述のとおりであるからであると判示していますので、認知症の人が訴訟を起こすことは出来ません。認知症の人について後見開始決定が出され、後見人がついた後で、人事訴訟法14条1項本文、「人事に関する訴えの原告又は被告となるべき者が成年被後見人であるときは、その成年後見人は、成年被後見人のために訴え、又は訴えられることができる。」と規定に基づき、後見人が原告となって、離婚や離縁の請求をすることになります(調停前置になりますが)。