遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで①
1 生命保険金
生命保険金は相続財産ではなく、受取人の固有の財産ですので、相続財産ではありません(最判昭40.2.2・最判平14.11.5)。また、生命保険金は、原則として、後述の特別受益にもなりません(最決平16.10.29)。これらについては、改めて解説します。
2 死亡退職金
死亡退職金は、退職金支給の趣旨から特定の者に帰属させる性質のものであって、相続財産ではありません(最判昭60.1.31)。
相続人ではない内縁の妻に死亡退職金の受給権を認めた最高裁判決
勤め先の規定で、死亡退職金は「遺族」に支給すると書いてあるケースで、最判昭60.1.31は、被相続人の内縁の妻を死亡退職金の受取人であると判示しました。
3 弔慰金
これも相続財産ではありません。勤務先に「弔慰金は遺族に支払う」という規定がある場合も、その遺族の意味や範囲は支払う側で決めてよく、相続人ではない内縁の妻に支払われる場合もあります。
4 香典
香典は、主として、遺族が負担する葬式費用の一部に充当し遺族の経済的負担を軽くすることを目的とした贈与であるとされ、その贈与の相手方は喪主であるとされていますので、相続財産ではありません。
5 相続開始時から遺産分割時までの間に、相続財産である賃貸マンションから生じた賃料債権
最判平17.9.8は、「相続開始から遺産分割までの間に遺産である賃貸不動産から生ずる賃料債権は、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するもの」と判示しています。それまでは、これが遺産分割の結果マンションの所有者になった者だけが全額取得するのか、共同相続人全員が相続分の割合で取得するのかは争いがあったのですが、この最高裁の判決により決着を見ました。