遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで①
1 祭祀用財産
家系図、位牌、仏壇、墓石や墓碑、墳墓の敷地である墓地の所有権または使用権等は「祭祀用財産」といわれます。これらは、相続の対象にはならず、祭祀の主宰者が承継します。
祭祀の主宰者
祭祀の承継者は、被相続人が指定した者、地域の慣習、家庭裁判所の順で決めることになります。
家庭裁判所は、亡くなった人が生前誰を頼りにしていたか、死後誰に祭ってもらいたいと願っていたかを推認してその人を祭祀の承継者とする傾向がありますが、祭祀の承継者は原則として1名です。
2 複数の人を祭祀の主宰者とした裁判例
特別の事情があれば、祭祀財産と言われる、家系図、位牌、仏壇、墓石や墓碑、墳墓の敷地である墓地の所有権または使用権等を分けて、複数の人に帰属させる場合もあり、後妻と先妻の長男を祭祀の承継者として指定した例もあります。
3 後妻や内縁の妻を祭祀の主宰者とした裁判例
東京高裁平成6年8月19日決定は、先妻の子と後妻が争った事案で、後妻を祭祀承継者と認め、高知地裁平成8年10月23日判決は、内縁の妻と相続人である子とが争ったケースで、遺骨は内縁の妻が承継するとしました。
4 遺体や遺骨
遺体や遺骨は遺産ではなく、相続の対象にもなりません。遺体や遺骨は、慣習に従って祭祀を主宰するものに帰属するものとされております(最高裁判所平成元年7月18日判決)。