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相続 147 抵触遺言、抵触行為で、遺言の撤回をすることは可能

菊池捷男

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1 遺言では、遺言者の最終意思が尊重される
いったん遺言を書いても、その後、遺言者の意思が変わった場合、すでに書いた遺言の効力を認めることは、遺言者の意思に反します。

2 遺言者が、遺言を書いた後、遺言内容に抵触する遺言を書いたときは、先に書いた遺言は無効になる
例えば、遺言者が、「長男にA宅地を相続させる」との遺言を書いた後で、「長女にA宅地を相続させる」との遺言を書くと、先に書いた遺言と後で書いた遺言は、抵触しますので、先に書いた遺言は撤回されたとみなされます。

3 遺言者が、遺言を書いた後、遺言内容に抵触する行為をした場合でも、先に書いた遺言は無効になる
例えば、遺言者が、「長男にA宅地を相続させる」との遺言を書いた後で、長女にA宅地を贈与してしまった場合、この贈与は先に書いた遺言と抵触しますので、先に書いた遺言は撤回されたとみなされます。
参照:
民法1023条
前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
2前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。

4 では、遺言者が「長男にA宅地を相続させる」との遺言を書いた後で、「長男にB宅地を相続させる」との遺言を書いた場合は、抵触すると言えるか?

5 抵触の意味
前記の例で2に書いた、「長男にA宅地を相続させる」という遺言と「長女にA宅地を相続させる」という遺言は、両立しません。ですから、この場合は、2つの遺言が抵触することは明らかです。
では、抵触とは、何でしょうか。前後する遺言が、同時には実現できない場合に限定すべきでしょうか?
判例や学説は、抵触の範囲を広く解しているようです。
最高裁昭和56.11.13判決は、「抵触とは、諸般の事情より観察して後の生前処分が前の遺言と両立せしめない趣旨のもとにされたことが明らかである場合も包含する」と判示しており、先の遺言と後の遺言が、全く両立し得ない場合でなくとも、抵触を認めていますので、4は、結局のところ、遺言者の意思解釈の問題になってきます。

6 身分行為の変動による撤回も認められる。
前記最高裁昭和56.11.13判決の事案は、遺言者が、甲を養子にした後で、甲に財産を遺贈する旨の遺言を書いたさらにその後で、甲と離縁したケースです。
判決は、遺言者は、甲と「協議離縁し、法律上も事実上も上告人らから扶養を受けないことにしたのであるから、右協議離縁は本件遺言による遺贈と両立せしめない趣旨のもとにされたとみるべきで、本件遺贈は取消(当時は、民法撤回の趣旨)されたものである、と判示しました。

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菊池捷男(弁護士)

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