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林原と会社更生法 6 S電器の管財人の悔い

菊池捷男

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1 桑田変じて蒼海となる
眼前に、青々と豊かに茂って見えた広大な桑田が、瞬きをした瞬間、藍よりも濃い滄海であった。そんな感じのする林原劇の幕開けであった。

2 桑田を滄海に変えた“負債”
いうまでもなく、林原という豊かな桑田を、何もない滄海に変えたものは、借金という水面である。
水面の嵩が高くなり、桑田を隠してしまった、と言えば、分かりやすいかもしれない。

3 企業には常に、滄海に没するリスクがある
無借金で経営できる企業は、数少ないであろう。
多くの企業、特に、時代のニーズを先取りし、果敢に攻めていく企業は、借金というエネルギーを持たなければ、立ちゆかなくなる。
その意味で、果敢な冒険精神を持つ企業の方が、林原同様、借金の水位があがって、そこに没するリスクが高い。

4 借金を恐れては、敗北を招く
いうまでもなく、借金を恐れては、何もできない。
借金を梃子に、一段と成長していくこと、成長を続けることが、企業には求められるのだ。

5 一度の水没で、企業は、生命を絶たれるのか?
そんなことはない。企業には、世の激浪に揉まれ、存亡の危機に陥ることはある。
1度の水没くらいで、生命を絶たれてはたまらない。

6 会社更生法は、企業の生命を絶つのか?
企業の生命を、外形に見える企業と見れば、生命を絶つことはしない。
しかし、企業を、それまでの経営者の誇りと見、財産を見るときは、多くの場合、その企業の生命を絶ってしまう。完膚無きまでに。
しかし、民事再生法の場合は、基本的には、後者の意味の、企業の生命も絶つことはしない。

7 S電器の法律管財人に残る悔い
S電器は、更生手続終結後、大きく変わった。高収益企業に変貌を遂げたのだ。
S電器の生命を、外形に見える会社と見れば、生命は絶たれなかっただけでなく、新たな成長を遂げることができた。
しかし、S電器を、それまでの経営者の誇りと見、財産を見るときは、S電器は、完膚無きまでに、その生命を絶たれてしまった。
外形に見えるS電器の再生と成長は喜ばしいことだ。
しかし、更生手続終結後のS電器の成長の原因が、それまで手塩にかけてきた経営者の夢や誇りや経営努力に(すべてではないが一部は)あったと考えるとき、S電器の経営者を新しく生まれ変わった会社の株主から排除したことに、法律管財人には、悔いが残った。

8 悔いは解消できたのか?
できた。
S電器の更生計画で、100%減資をしなくてもよかったのではないかという悔いは、解消可能であった。
例えば10億円超であった資本金を3000万円まで減資して、1億2000万円を増資することにして、その増資分を新しい株主に出資してもらえば、資本金1億5000万円のうち新しい株主は1億2000万円の株式を保有できるが、それまでの株主も3000株の株式を保有でき、ともにS電器の成長と発展を喜び得たのではないかという悔いである。
S電器の法律管財人には、S電器の更生手続終結後10数年を経、S電器の検討を耳にするたび、この悔いが蘇ってくる。

9 林原の場合
林原も、それまでの経営者や株主の功績が0ではないと思う。
そうであれば、管財人には、更生手続終結後の林原を、縁もゆかりもない第三者に、まるまる、無償に近い形で与えるような結果にはしないでいただきたいものである。
公平に、公正に、林原という会社を評価し、林原が岡山県民の財産であり、誇りである実態に目を向け、歴史に残る会社更生劇にしていただきたいものである。
S電器の更生管財人のような悔いの残らない。

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