遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで①
1 最高裁昭和48.9.14判決事案
この事件は、公立学校校長から公立学校教員教諭に降任した処分の取消訴訟事件ですが、まず、任用権者である教育委員会は、
公立学校校長の職にあったAが、
⑴ 学校統合問題について、
小学校の廃校を招来するものであったことから、統合につき町議会の議決を経たのちにおいても統合賛成派と統合反対派の対立は激しく、両者互いに相手方の見解、行動を非難、誹謗し合うという醜い対立を生んいた中、校長たるの立場を利用して反対派に加担し、これに便宜を与えるものと認められるような行為に出たこと
⑵ その他にも、校長としての品格と節度を疑わせる言動をしたことをもって、
校長たるの適格性に欠けるところがあるとの評価をして、降任処分を下しました。
そこで、校長は、その取消訴訟を起こしたのです。
2 原審(広島高裁)の判決
原審は、
教育委員会が校長の言動を具体的に認定したのに対し、高裁はその具体的事実の有無を認定しないで、校長が置かれた立場、背景をなす諸問題についての客観情勢の推移、校長のとった見解、態度等の概略を認定しただけで、教育委員会が認定した事実が仮にあったとしても、これらの事実は「校長の職に必要な適格性を欠くことの徴表であるとは認めがたい」と判断して、降任処分を取り消すべきものと判示しました。
3 最高裁判決
最高裁判所は、原審判決を、行政庁(教育委員会)の裁量権を侵害した判決で、違法であると断じ、破棄差し戻しました。
その理由は、
「原審の右認定判断は、その認定事実に対する独自の解釈と見解のもとに上告人(教育委員会)の具体的な各主張事実を観察評価したうえ、被上告人(校長)の適格性の有無について一定の結論を下し、これと異なる上告人の判断を裁量権の行使を誤つた違法のものと断じているのであつて、原審の判断には、上告人が本件降任処分の事由の存否について上記のような裁量的判断権を有することを無視したか、ないしは裁判所のなすべき審査判断の範囲を超えて処分庁の裁量の当否に立ち入つた違法があるといわなければならない。」としています。