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林原と会社更生法 3 更生会社が成功する理由

菊池捷男

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1 債務の軽減
 窮境にある株式会社について、更生手続が開始されると、一般債権(更生債権)も、担保権(更生担保権)も、権利の行使ができないことになり、これらの権利は、通常、更生計画で大幅な変更を余儀なくされる。
権利の変更とは、債権の減額であり、減額後の金額の分割弁済である。
具体的には、次のようになる。
更生担保権は、被担保債権額全額が支払われることはなく、担保物件たる資産(多くの場合不動産)の評価額が支払を受ける限度となる。したがって、担保権者でも被担保債権の一部しか支払いを受けられないのが通例だ。そして、多くの場合、その支払も長期分割弁済となる。更生債権は、更生会社の資産・資力等による制限を受けて、減額を余儀なくされた上に、長期(会社更生法では最長15年)分割弁済を余儀なくされる。
ただ、更生会社が資産や事業の一部を売却処分した場合は、その代金が、一時金で、債権者に支払われる場合があるが、売却代金の一部が、設備資金、運転資金として更生会社の内部に留保される場合もある。
例外的に、更生会社の全事業が譲渡され、あるいは、スポンサー会社が弁済資金を提供することで、一時金で、減額された更生担保権、減額された更生債権の支払が全部なされる場合がある。
が、いずれにせよ、債権者が債権の100%弁済を受けることは、まずない。
債権のカットという、不利益は避けられないのである。

2 債務が軽減した後の更生会社
 更生会社の債務が、支払可能なまでに軽減した姿を想像していただきたい。
これに新たな資金が投じられ、運転資金、設備資金が確保されれば、会社は経営できることになる。
債権者への弁済は、更生計画に従い、減額後の債務を、分割で支払っていくのである。よほどの経済の悪化が生じない限り、更生計画は履行可能である。
それは更生計画では、経済の先行きを最も厳しく見た上で、弁済可能な弁済計画を立案しているからである。
で、あるから、更生会社は、まずは、うまくいく。
S電器の場合もそうであった。更生計画で定めた弁済期間より、はるかに早く、更生計画により減額された債権は、全額弁済され、予定よりかなり早く更生手続は終結した。

3 林原の場合
林原も、債権者の債権の減額などにより、財務内容が格段に改善された会社として、蘇るであろう。

4 更生会社が成功する淵源
それは、債権者の犠牲のみによるものでは、決してない。
更生会社にある、物的資産と人的資産、更生会社の回りにいるステークホルダーと言われる関係者の存在にある、と言って良い。
S電器の場合を考えてみる。
S電器は、広大な土地に、最新鋭の機械を設置した工場があった。多くの有能な技術者群がいた。また目立たないが縁の下の力持ち的存在の多くの事務系の社員もいた。
また、S電器の技術を買う潜在的なユーザーがいた。
これらがあったから、S電器のその後が成功に至ったのである。
むろん、これらだけで、S電器が成功するものでもない。
更生手続開始後に派遣された、事業管財人、その代理、その事業を支援した金融機関の存在も大きい。

以下、3に続きます。

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菊池捷男(弁護士)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

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