遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで①
1 林原の現状
名門企業の林原が、会社更生法の適用を申請し、現在、林原は、法的には、東京地方裁判所から選任された保全管理人によって、財産の管理と事業の経営がなされている。
2 林原が申立てた会社更生法とはなんなんだ?
会社更生法とは、窮境にある株式会社の、事業の維持更生を図る法律である。
その方法として、会社の債務を減額してもらい、また、返済期限を猶予してもらうのである。
すなわち、会社更生法の適用を申請した会社は、通常過大な債務をかかえている。
その債務がある故に、会社の経営ができなくなっている。そこで、返済が可能になるまで、減額と分割弁済をしてもらうのである。
3 その場合、林原の経営は誰がするのか?
会社更生手続が開始されるまでは保全管理人、更生手続が開始された後は更生管財人、更生手続が終結した後は会社が、会社の経営と資産の管理をすることになる。
4 更生手続はうまく行くのか?
うまくいく。更生会社の多くは、更生に成功し、更生手続が終結した以後の会社は健全な会社に生まれ変わっている。
5 生まれ変わって良くなった会社は誰のものか?
法的には、株式会社は株主の物である。
その株主が誰になるかは、更生手続の中で、会社の資本金や株主をどうするかで決まる。
6 会社更生法では、更生手続終結後の株主を今の株主から交代させることはできるのか?
できる。株主を交代させないでいることも可能であるが、会社が債務超過である場合、理論上株主の権利はゼロであるから、更生手続の中で100%減資は可能であり、その場合は、増資がなされ、新しい株主が生まれてくることになる。なお、100%減資とは、従前の株主の権利が0になる。つまりは紙切れになるということである。
7 更生手続が終結し、健全な会社になった林原は、そのときの株主の物だというのなら、誰が株主になるかは、株主にとっては重要な問題だが、株主は誰がなるのか?
可能性としては、
① 現在の株主がそのまま株主で残る。
② スポンサー会社が株主になる。
③ 金融機関団が債権額に応じて出資(債権を株式に振り替えるデッド・エクイティ・スワップDESによる場合を含む)をし、株主になる。
④ 減資され、現在の株主の収支比率を下げ、これに新たな株主が加わり、これらが併存する形になる。
⑤ その他
が考えられる。
8 ①から⑤までの可能性の中で、どの株主の可能性が一番大きいか?
②のスポンサー会社の可能性が一番に考えられるが、これは関係人集会で債権者多数の同意が要るものであるので、③の債権者が債権の割合で株主になる可能性も大きい。いずれが大きいかは即断できない。
以下は明日のコラムに続きます。