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相続 124 遺言文例 推定相続人の廃除

菊池捷男

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1 推定相続人の廃除
 推定相続人の廃除とは、被相続人が亡くなるとすぐに相続人になる立場の者から相続人資格を奪ってしまうことです。
被相続人の、生前の意思表示又は遺言による意思表示により、裁判所が決定するのです。廃除の理由は、①被相続人に対して虐待をしたとき、②重大な侮辱を加えたとき、③推定相続人にその他の著しい非行があったとき、です。

2 廃除は遺留分を有する相続人に限られる。
遺留分を有する相続人とは、配偶者、子又は代襲者、直系尊属だけです。
兄弟姉妹とその代襲者(甥・姪)は、廃除の対象になっていません。
遺留分のない相続人の場合は、被相続人が遺言で、彼らには何も与えないようにしておけば目的が達成できるからです。
遺留分を持っている相続人の場合は、遺言で、彼らには何も与えないようにしていても、彼らが遺留分減殺請求権を行使すれば、遺産の一部が彼らのものになり、目的が達成できないことになります。そこで、遺留分を有する相続人についてのみ、廃除の制度を設けたのです。

3 廃除を決めるのは家庭裁判所
推定相続人の廃除を決定するのは家庭裁判所です。被相続人は家庭裁判所へその請求が出来るだけです。

4 生前でもできるし、遺言でもできる
被相続人からする推定相続人の廃除請求は生前できますし、遺言でもできます。
生前の廃除請求は、家庭裁判所への申立でします。遺言による場合は、遺言執行者が家庭裁判所へ申し立てることになります。

5 遺言事項
 遺言者の長男○○○○(生年月日)は平成○○年頃から些細なことに激高して、遺言者に対し馬鹿親父と罵った上、殴る蹴るの暴行を加えるなどの虐待を続けてきたので,遺言者は,右長男を廃除する。

6 裁判所に認めてもらえるだけの証拠を準備しておく必要がある
廃除の対象になった人にとって、相続人資格を奪われるということは重大な問題です。
真実廃除理由があり遺言で廃除の意思表示をしても、廃除の対象になった者から、その遺言は被相続人が後妻に気兼ねして先妻の子について廃除の遺言を書いたもので、被相続人の真意ではない、真意だとしても廃除理由はない、などといって争われるものと考えておかなければなりません。そのために、廃除理由があることの証拠を集めておく必要があります(遺言を書いても、家庭裁判所で廃除が認められる確率は決して高いものではないようです)。

7 推定相続人廃除の取消
生前廃除した推定相続人について、遺言で、取り消すことも可能です。
遺言事項は、「遺言者は,長男○○○○(生年月日)についての廃除を取消す。」だけで十分です。
この場合も、遺言執行者は、家庭裁判所へ廃除の取消の請求をすることになります。

参照

民法892条
遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。
民法893条
被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人
の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。
民法894条
被相続人は、いつでも、推定相続人の廃除の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
2前条の規定は、推定相続人の廃除の取消しについて準用する。

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