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相続 118 寄与相続人は遺留分のほかに寄与分が認められるの?

2011年2月2日

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 相続 手続き


1 寄与相続人
寄与相続人とは、寄与分が認められる相続人のことです。
寄与相続人は、「被相続人が相続開始の時において有した財産の価額」(a)から「寄与分」(b)を除いた財産(a-b)を、他の共同相続人との間で、それぞれの法定相続分又は指定相続分で分割取得するほかに、寄与分(b)をもらえることになっています(民法904条の2)。

2 そうすれば
そうすれば、寄与分は、寄与相続人の固有の権利と言ってもよく、寄与相続人の遺留分が侵害されたときは、遺留分の回復だけでなく、寄与分まで回復できそうです。
また、寄与相続人でない相続人が、寄与相続人に対して遺留分減殺請求をしたときは、寄与相続人は、相続財産の中から寄与分を控除した残り(a-b)に遺留分割合を乗じて算出した額のみを返還すれば良いように思えます。

3 しかしながら
しかしながら、判例は、いずれの場合も、寄与分を無視した遺留分の減殺しかみとめていません。
まず、寄与相続人でない相続人が、寄与相続人に対し遺留分減殺請求をし、寄与相続人は、遺留分は(a-b)を基準に算出すべきであると主張した事案で、東京高裁平成2.8.7判決は、根拠なしとして、この場合の寄与分は、遺留分を除かない財産の額(a)を基準にすべきことを判示しました。

4 寄与相続人から寄与分のない相続人へ遺留分減殺請求する場合
また、東京高裁平成3.7.30判決は、寄与分は,共同相続人間の協議により,協議が調わないとき又は協議をすることができないときは家庭裁判所の審判により定められるものであり,遺留分減殺請求訴訟において,抗弁として主張することは許されないと解するのが相当である、と判示し、寄与相続人から遺留分減殺請求をする場合も、寄与分の主張は出来ないとしています。この判決は最高裁平成8.1.26判決により確定していますので、判例といってよいでしょう。

5 根拠がないことの根拠
民法1044条は、遺留分についての準用規定ですが、寄与分を定めた民法904条の2の規定は遺留分について準用されていません。要は、遺留分を計算する場合に、寄与分を考慮にいれる根拠規定がないのです。その根拠は、民法1044条です。根拠のない根拠がこの規定になるのです。
ということで、遺留分の計算をする場合、寄与分は考慮されないということになります。ですから、以上の判決はやむを得ない結論になるのです。

参照:
民法1044条
第887条第2項及び第3項、第900条、第901条、第903条並びに第904条の規定は、遺留分について準用する。
(注意:遺留分を定めた904条の2は準用されていない)

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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