遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで①
1 問題点
狭小な自宅のみが相続財産で、被相続人の死後、そこに相続人の1人(例えば後妻)が暮らしている。他の相続人(先妻の子)からその相続財産について遺産分割の協議を申し入れられたが、その相続財産を分割すると、後妻は住居を失ってしまう、そうかといって後妻にはその不動産を単独で取得しうるほどの代償金を支払う資力はない、という場合、後妻に安心して老後を過ごさせるために、先妻の子は自宅の所有権を取得し、後妻は生存中その自宅に無償で住むことが出来る権利の設定を受けるという遺産分割ができないか?という問題です。
2 審判例
⑴ 東京家裁昭和52.1.28審判は、相続財産である土地建物の一部で、相続人である子の1人が医院を開設しているケースで、土地建物を配偶者に取得させ、配偶者から医院経営者に医院部分を賃貸させた上で、配偶者が取得した土地建物の価額がその相続分を超えていたので、その超えた分については、他の相続人に代償金を支払わせました。
⑵ 高松高裁昭和45.9.25決定は、原審が、遺産である土地を取得する者と同土地上の建物を取得する者とを別人とした審判について、建物の取得者の土地を使用できる権利が明確ではないとして、原審の審判を取り消した上で、「敷地部分を本審判確定の日より20年間無償で使用させるものとする。」との決定(建物取得者に建物の敷地につき期間20年の使用貸借権を設定する決定)をしました。