遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで①
1 共同相続人間の協議で定める。
共同相続人間でする遺産分割協議の際、被相続人の財産の維持・増加に寄与した相続人(「寄与相続人」)がいるときは、共同相続人間の協議で、寄与分を定めることは、当然できます。
2 家庭裁判所の審判で定める。
寄与相続人の寄与分を、共同相続人間の協議で定めることができないときは、民法904条の2の第2項の「前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。」に基づき、家庭裁判所で寄与分を定めてもらうことができます。
3 寄与分を定める審判は、遺産分割の審判の申立がないと、申立はできない。
それは、寄与分が遺産分割の前提として具体的相続分を算定するためのものだからです(浦和家庭裁判所飯能出支部昭和62.12.4審判。最高裁判所事務総局家庭局『改正民法及び家事審判法規に関する執務資料』(昭56)等)。
要は、遺産分割から離れて、寄与分の定めだけを求めることは出来ないのです。
4 寄与分の申立に時間的制限を設けられる場合がある。
家事審判規則103条の4第1項は「家庭裁判所は、遺産の分割の審判手続において、その当事者が寄与分を定める審判の申立てをすべき期間を定めることができる。この場合において、その期間は、1箇月以上でなければならない。」と規定しており、同2項では「前項の規定に基づいて定められた期間が経過した後にされた寄与分を定める審判の申立ては、却下することができる。」とされていますので、寄与分の申立について期間が指定されたときは、その期間内に申立をしなければなりません。
5 寄与分の申立をすべき期間が定められた場合でも、その期間内に申立の準備ができないときは、期間の延長を申立てておくべきである
高松高裁昭和62.8.14決定は、寄与相続人からの期間延長の上申を認めずにした遺産分割の審判(したがって寄与相続人の寄与分は認められていない)を、寄与分の「申立てが遅滞したことにつき申立人の責めに帰すべき事由がある」とはいえないとして、取り消していますので、期間の指定を受けても、準備ができないときは、その事実を家庭裁判所に明らかにして、期間延長の上申をしておくべきです。
5 寄与分の申立は、遺産分割の抗告審でもできるか?
家事審判規則103条の4第3項は「第1項の期間が定められなかつた場合においても、遺産の分割の審理を著しく遅延させると認められ、かつ、申立てが遅滞したことにつき申立人の責めに帰すべき事由があるときは、家庭裁判所は、当該寄与分を定める審判の申立てを却下することができる。」と規定していますが、実務では、抗告審だから寄与分の申立を認めないと姿勢ではなく、高松高裁平成11.1.8決定や広島高裁平成6.3.8決定などは、遺産分割の抗告審での寄与分を定める審判の申立を認めています。
6 遺産分割終了後であっても、寄与分を定める申立は可能か?
前記最高裁判所事務総局家庭局『改正民法及び家事審判法規に関する執務資料』や学説は、消極説(できないと考える考え)が支配的です。