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相続 64 対価を受けている場合は「寄与」にならないのか?

菊池捷男

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1 寄与分の根拠
共同相続人の中の「被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者」に寄与分が認められる根拠は、寄与によって増加・維持された相続財産の中に、寄与者の「共有持分ないしは潜在的な持分」があるからだとする“共有説”、寄与によって得た被相続人の利得を不当利得として寄与者に返還するべきだからだとする“不当利得説”、いやいや、寄与者の寄与に対する報酬だとする“報酬説”がありますが、そのいずれの考えにおいても、寄与者が寄与行為に対し正当な報酬の支払いを受けている場合は、寄与分は当然認められないことになります。

2 少額の対価
ですから、寄与分が認められる相続人は、寄与行為に対し「対価」を受けていないことが条件になります。
ただし、この対価は、正当な対価です。対価らしき物を得ていても、対価と言える程度に達していない場合は、対価を得たことにはなりません。
大阪高等裁判所平成2.9.19決定は、
「被相続人の事業に関して労務を提供した場合、提供した労務にある程度見合った賃金や報酬等の対価が支払われたときは、寄与分と認めることはできないが、支払われた賃金や報酬等が提供した労務の対価として到底十分でないときは、報いられていない残余の部分については寄与分と認められる余地があると解される。」として、家業に従事していたが小銭程度しかもらっていなかった共同相続人につき、寄与分を認めるのが相当と判示しました。

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菊池捷男(弁護士)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

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