遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで①
1 問題
相続人への遺贈や贈与ならばその相続人の特別受益になり、相続に際して持戻し計算をしなければなりませんが、相続人ではなく、その相続人の配偶者や子に遺贈や贈与がなされた場合、相続人への遺贈や贈与と同視して相続人の特別受益になると考えるべきでしょうか?
2 民法の規定と裁判例
民法903条は「共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、・・・」と規定していますので、遺贈や贈与は「相続人」が受けたときに特別受益になるとしていますが、裁判例では「相続人の子」が被相続人から贈与を受けた場合に、それがその「相続人の子に対する扶養義務の懈怠に基因すろとき」は、実質的には相続人が贈与を受けたのと変わらないので、相続人への贈与と同視して特別受益になるとしているもの(神戸家庭裁判所尼崎支部昭和47.12.28審判)があります。
また、「相続人の配偶者」への贈与が、贈与の経緯、贈与された財産の価値、性質、それによる相続人の利益などを考慮し、「実質的には被相続人から相続人への贈与と変わらないと認められるとき」は、相続人の特別受益とみるべきだとするもの(福島家庭裁判所白河支部昭和55.5.24審判)もあります。