遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで①
遺贈してもらえることなっていた家屋が、遺言者が死亡する前に焼失したが、その家屋に火災保険が付いていた場合、受遺者は、この保険金をもらうことができるか?
これは、前提を定め、場合分けをする必要があります。
前提の1は、遺言書で、受遺者に、遺言者の家屋を遺贈すると書かれていた場合です。
前提の2は、その家屋が、遺言者の生前、火災で焼失していた場合です。
場合分けの1
遺言者が生きている間に遺言者が火災保険金をもらっていない場合。
この場合は、受遺者が、遺言者の保険会社に対する火災保険金請求権を遺贈されたものと推定されます。
「推定される」という意味は、「そうじゃないよ」ということを、相手方である、相続人や遺言執行者が証明できないときは、受遺者が保険金をもらえる、ということです。
民法999条の「遺言者が、遺贈の目的物の滅失・・・によって第三者に対して償金を請求する権利を有するときは、その権利を遺贈の目的としたものと推定する。」という規定が、この意味になるのです。
場合分けの2
遺言者が生前すでに火災保険金を受け取っていた場合。
そのときは、遺言者が生きていたとしても、民法999条の要件の1つである「第三者に対して償金を請求する権利(具体的には、火災保険金請求権)を有するとき」に該当しませんので、受遺者は、何ももらえないのです(通説)。