遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで①
最高裁判所平成平成17.2.1判決事件をご紹介します。
事案の内容
Aの父は代金1200万円を支払って,ゴルフクラブの会員権を取得し,ゴルフクラブの正会員となった後、ゴルフ会員権をAに贈与し、Aは、ゴルフ経営会社に対し,名義書換手数料82万4000円を支払い、ゴルフクラブの正会員となりました。その後、Aは,ゴルフ会員権を100万円で売り、その年分の所得税の申告をすることになったとき、ゴルフ会員権の譲渡に係る所得金額の計算において,父が支払った代金1200万円及びAが支払った名義書換手数料82万4000円の合計1282万4000円を資産の取得費として,売却代金100万円を総収入金額として,それぞれ計上し,その差額の1182万4000円を総合課税の対象となる所得税法33条3項2号所定のいわゆる長期譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額として、申告し、他の所得と合算して、総所得金額を3296万9202円とする申告をしました。これに対し税務署長は、本件譲渡所得金額の計算において本件手数料82万4000円を資産の取得費として認めることはできず,上記損失の金額は1100万円になるとして,Aに対し,その年分の所得税について総所得金額を3379万3202円とする更正及び過少申告加算税の賦課決定をしたのです。
なお、資産の贈与を受けた者がその資産を譲渡した場合の譲渡所得の計算においては、取得費は、贈与をした者の取得費を引き継ぐことになっていますので(所得税法60条1項)、Aが100万円で売却したゴルフ会員権の取得費が、少なくとも、Aの父が購入したときの金額1200万円であることは争いがありません。争いになったのは、Aが父から贈与を受けたときに支払った名義書換料も、取得費に計上できるかということでした。
最高裁判所平成17.2.1判決は、「資産の取得に要した金額」は、当該資産の客観的価格を構成すべき取得代金の額のほか,当該資産を取得するための付随費用の額も含まれると解される、として、Aの税務申告を正しいものとしたのです。
この判決の後、国税庁は、全国に通知を発し、従来の税務の扱いを変えた外、還付を求めてきた納税者には過去5年分の還付をしております。
5年以上前の分については、これは納税者自身が、国に対し当事者訴訟を起こせば、返還を受けることが可能になるはずです。その理は、本コラム「行政13」で解説しているところです。