遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで①
平成16年のクリスマスイブの12月24日、最高裁判所は、旧興銀に、3200億円の法人税の還付を受けることができる判決を下しました。
この事案は、旧興銀が、自行が母体になって作った住宅専門会社(いわゆる住専)に3760億円を貸し付けていたのですが、その債権が、法的には、破産になっても30%以上の配当の見込まれるものであったのを、全額放棄したことから始まります。
そして、旧興銀は、放棄の日の属する事業年度で、法人税法上の貸し倒れ処理をしたのですが、税務署は、その債権は回収不能とは言えないとして貸し倒れ処理(損金経理)を認めず、更正処分をし、旧興銀に法人税を課したのです。
旧興銀が、住専に対し貸し付けた債権が全額回収できないと判断したのは、他の金融機関と同じ立場で回収を考えると、母体行として社会的批判を受ける外、機関投資家として旧興銀の金融債を引受ける立場にある農協系統金融機関の反発を買い、金融債を引き受けてもらえなくなる等の経営的損失を受けるおそれがあったこと、そのため、閣議決定や閣議了解で示された住専処理計画に沿って自行の債権を非母体金融機関の債権に劣後する扱いとすることを公にせざるを得なかったこと等により、債権の回収が不可能になったと判断したからです。
最高裁判所平成16.12.24は判決は、「金銭債権の貸倒損失を当該事業年度の損金の額に算入するためには,当該金銭債権の全額が回収不能であることを要すると解される。そして,その全額が回収不能であることは客観的に明らかでなければならない」とはしましたが、その場合は、「債務者の資産状況,支払能力等の債務者側の事情のみならず,債権回収に必要な労力,債権額と取立費用との比較衡量,債権回収を強行することによって生ずる他の債権者とのあつれきなどによる経営的損失等といった債権者側の事情,経済的環境等も踏まえ,社会通念に従って総合的に判断されるべきものである。」とし、
旧興銀の貸し倒れ処理を適法だと判示したのです。
かくして、旧興銀は、クリスマスイブの日、3200億円ものビッグなプレゼントを受けることができたのです。