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鴇田誠治

遺言書作成と相続手続きのプロ

鴇田誠治(ときたせいじ) / 行政書士

社会保険労務士・行政書士 ときた事務所

コラム

確かな遺言書を自分で作るための財産調査のポイント

2019年5月8日 公開 / 2020年6月30日更新

テーマ:遺言書のこと

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 投資信託遺言書 作成遺言書 書き方


遺言書には自筆証書遺言と、公正証書遺言書があります。

私としては公正証書遺言をお勧めしておりますが、どうしても自分で作りたい、まずは自分でやってみたい、という方もいらっしゃるでしょう。

今回は、そんな方のために、自筆証書遺言を自分で作るにあたって必要となる「財産調査」のポイントを解説します。

そもそも、遺言書に書かれる内容のメインの部分は「どの財産を誰に渡すのか」にあります。

したがって、ご自分がどのような財産をどれだけ持っているのかを正確に把握することはとても重要です。

せっかく作った遺言書なのに「一部の財産について書くのを忘れた」なんてことにならないようにしなければなりません。

記載漏れの財産や評価額に誤りがあることが発覚すれば、かえって相続争いの原因となりかねないからです。

ですから、できるだけ客観的な資料を集めて正確な財産目録作りをしてほしいです。

不動産は謄本(登記事項証明書)を取って正確に!

まず、土地建物などの不動産の場合には、不動産が所在する役所の固定資産税課等から、所有する不動産全部の評価証明書を取得してください。

各不動産の評価額(固定資産税評価額)はもちろん記載されますが、所有する不動産が地番または家屋番号ごとにすべて記載されてきます。

そこから、「相続したあの土地は実は2筆に分かれていたのか」とか、「通路部分の持分は〇分の〇だったんだ」などが分かってきます。

役所から送られてくる「固定資産税の課税通知書」にも不動産の記載はあるのですが、この通知書には非課税になっている不動産(道路部分やゴミ捨て場など)やその持分が記載されていないことがありますので、念のため評価証明書を取得して確認してください。

評価証明書の情報だけで遺言書作ることもできますが、できればその評価証明書をもって法務局へ行き、登記事項証明書を取得して、その内容をもとに作成してください。

ちなみに、民法の改正により平成31年1月13日から自筆証書遺言をつくるときに、不動産や預金を特定するための財産目録については手書きでなくても良いこととなりました。

たとえば、不動産の登記事項証明書については、以下のような体裁になります。

預貯金の調査

預貯金については、通帳や証書という「現物」がありますので、分かりやすそうに思えます。

しかし、以前に通帳を作りっぱなしで何も手を付けないまま失くしてしまった場合や、定期預金の証書がなくなってしまい、解約したかどうかも忘れてしまった場合など、亡失してしまうことがあります。

また、ゆうちょ銀行の通帳や一般の銀行の総合口座の通帳で多いのですが、通帳の後ろのほうに記載のある定期預金の欄で「残高があるのかないのかぱっと見わかりにくい」通帳も多いです。

このような中途半端な情報ではいけないので、確実を期すためにはやはり「残高証明書」を取得してほしいです。

費用は若干かかりますが、「えっ?こんな口座あったっけ??」というものも出てくる場合があります。

なお、預金についても自筆証書遺言をつくるときの別紙の目録として、通帳の写しに署名押印することで代用することができるようになっており、次のような体裁になります。

有価証券の調査

上場株式や国債、投資信託などについても、できれば預貯金と同様に残高証明書を取得することをおすすめします。

保有資産の明細だけであれば、年末近くに証券会社等から送られてくる明細書でも十分なのですが、せっかくなので、残高証明書とセットで評価額が分かる資料も取得してください。

有価証券関係の評価額は少し分かりにくいところもありますし、評価額が分かると相続税シミュレーションのための資料にもつかえるので便利です。

その他の財産

その他の財産としては、自動車や宝石、書画骨董などの動産もありますが、これらは現物がありますので把握しやすいので良しとして、ここで財産から漏れやすいのが保険契約です。

保険契約といっても、契約者(自分)、被保険者(自分)、保険金受取人(配偶者や子)のような死亡保険金を受取れる契約内容のものではありません。

この保険契約の場合は、そもそも相続財産にはならないため、遺言書に記載する必要もありません。

遺言書で記載漏れになりやすい保険契約とは

遺言書で記載漏れになりやすい保険契約とは、契約者(自分)、被保険者(子や孫)、保険金または満期金受取人(自分)という内容の契約です。

この契約で(自分)に相続が発生した場合には、被保険者は死亡しておらず、契約者と受取人(自分)が死亡していますので、保険金は支払われず、保険契約の権利(解約して返戻金を受取れる権利)として相続財産となります。

ということになるので、このような契約形態の保険がある場合は遺言書に記載する必要がありますから、証書などを確認するか、見当たらない場合には契約内容の分かる書類を保険会社から取り寄せておくことをおすすめします。


いかがでしたでしょうか。

財産目録を作るだけでも結構な作業量になるのではないでしょうか。

ただし、それぞれの手続きは難しい手続きではありませんから、時間をかけて一つひとつ取り組んでいけばできないことではありません。

できるだけわかりやすく書いたつもりですが、不明確なところもあるかもしれません。

そんなときはご相談ください。

この記事を書いたプロ

鴇田誠治

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鴇田誠治(社会保険労務士・行政書士 ときた事務所)

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