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コラム

遺言書で延命治療を拒否する意思表示が出来るか

遺言書

2018年12月3日

 今回は、遺言者さまが、もしご病気などになって、意思表示が出来る見込みがない、またはその可能性がかなり低い状態になってしまった場合に、その後の積極的な延命治療などを望まないというお考えであったら、その意思表示に遺言書を用いる事が出来るのか、という問題です。

 回復の見込みがない病気になってしまった場合、胃ろうや人工呼吸などの生命維持を目的とする延命治療を望まず、人間としての死を望むということは「尊厳死」と呼ばれています。
 これは、「延命治療の終了」を望むのではなく、「延命治療の開始そのもの」を望まないという事になります。

 尊厳死は、積極的な医療行為などで死期を早める、いわゆる「安楽死」とは異なりますが、それらに関しても様々な議論がありますので、海外とは違い、日本では明確な法律化がされていない状況にあります。
 
 尊厳死を希望するという意思表示は、「尊厳死宣言」などと呼ばれていますが、それを遺言で記す事につきましては、適当ではないとされております。
 それは、遺言書は遺言者さまが亡くなった時に効力を発生するものとなりますので、まだ生存しておられる状態でのご自身のご希望について、その効力を肯定出来ない、という理由からです。
 また、遺言書をご家族が見られるのは、遺言者さまが亡くなってから、という事が通常となりますので、見ていただくタイミングも適切とは限りません。

 それでは、尊厳死を望まれる場合には、どのようにすればよいのでしょうか。
 一般的には尊厳死を望むという意思が、その方の本心であり、現在だけでなくこれからもそのように考えている、という事が確認出来る書面をつくり、ご家族に託しておくことが考えられます。
 
 ただ、それをご自身が書いておくというだけではなく、それが間違いなく本人の意思であり、正常な判断において示されたものである、という事を証するため、「公正証書」によってそれを作成する場合、尊厳死の普及を目的とする団体に加入し、「リビング・ウィル(終末期医療における事前指示書)」と呼ばれる、ご自身の生前の意思を示しておく場合などがあります。
  ⇒「一般財団法人 日本尊厳死協会」など

 ただ、これらの方法によりましても、明確な法律が整備されていない以上、その希望が叶う保証はありませんが、本人の明確な意思表示と、ご家族を含めた病院との信頼関係が、その前提になるのではないかと思われます。

遺言書で託すことが出来る、財産の引き継ぎ以外の主な項目とは

 遺言書といいますと、預貯金やご自宅などの不動産の引き継ぎを記したもの、という理解が一般的ですが、その他には、遺言書でどのような事を託す事が出来るのでしょうか。

 遺言書で定められる財産以外の引き継ぎに関しましては、民法で規定のあるものと、規定がなくても解釈上定められるとされているものとして、主に次のような項目があります。

①生命保険金の受取人の指定や変更
 こちらに関しましては、「保険契約者としての立場を引き継いでもらう」のか、「保険金の受取人を変更する」のか、混同されることのない様に、明確に記載する必要があります。

②遺言による認知
 認知によって、「出生の時にさかのぼってその効力を生ずる」とされており、生まれた時から遺言者さまの子供であったことになります。

③特別受益の持ち戻しの免除
 遺言者さまが相続人となる方に「婚姻や養子縁組の為、もしくは生計の資本として」行った贈与につきましては、贈与を受け取った相続人となる方が、将来相続が発生した場合の相続分を先にもらったもの、とみなされる規定となっており、贈与を受けていた方は、将来の相続におきまして、その分相続できる割合が減る事になります。
 これを「特別受益の持ち戻し」といいまして、生前に多額の贈与を受けた相続人の方と、他の相続人の方々との間で均衡を保つように配慮された規定です。

 これを遺言者さまが「特別受益の持ち戻し」をしないようにしてほしい、つまり生前の贈与を相続の時に考慮しないでほしい、と遺言することが「特別受益の持ち戻しの免除」です。
 こちらは遺言でなくても行えますし、書面でなくても出来ますが、その内容によりましては、他の相続人の方々が不公平感を抱かれる場合もありますので、慎重に検討をする必要があると思われます。

 また、こちらにつきましては、先の民法改正によりまして、婚姻期間が20年以上のご夫婦の場合に、どちらか一方が居住する建物又はその敷地を贈与(遺贈を含む)した場合におきまして、持ち戻しの免除の意思表示をしていなかった場合でも、その意思表示があったものと推定される、という規定が加えられ、2019年7月1日より施行されることになっております。
 これによりまして、例えば生前に住居を母に贈与した父が亡くなった場合、持ち戻しの免除によって預貯金の相続分が少なくなる事が緩和される為、その後の生活費を取得しやすくなる、という効果が期待されます。

④祭祀承継者、遺言執行者の指定
 これらは、その後の円滑な相続におきまして、どちらも大切な役割を果たしますので、とても重要な項目です。
 ご自身でつくられた遺言書を拝見させていただいた時、その記載がないものも見受けられますので、財産の引き継ぎだけではなく、それらも併せて検討されることをお勧め致します。
  
 こちらにつきましては、以前のコラムでもお伝えさせていただいておりますので、よろしければご参照下さい。
  ⇒優しい遺言書のつくり方③ ~祭祀承継者、遺言執行者の指定について~

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