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コラム

遺言書は本当に必要?

2017年11月7日 公開 / 2021年1月8日更新

テーマ:遺言書

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 遺言書 作成遺言書 書き方

 皆様、初めまして。
 『相続まちの相談室』の行政書士・三上隆です。
 私は、相続や遺言などの終活を専門とさせていただいておりまして、各地で開催させていただいている無料相談会を通じまして、いろいろな方にご相談をお聞かせいただきました。
 ご相談に来られた方の中には、他に問い合わせが出来るところ(人)を知らなかった、と言われる方も少なくありませんでした。
 そこで、この場所をお借り致しまして、相続や遺言に関しまして、出来る限りわかりやすい言葉で、基本的な事を中心に少しずつお伝えしていこうと思います。
 何か少しでも、皆様のご参考になることがあれば、うれしく思います。

 さて、今回のテーマは「遺言書」です。
 「遺言書」と聞くと、皆様はどのように思われますか?
 私が相談会などでお聞きすることが多いお声は、「そこまで財産は無いので」とか、「うちの家族は、幸い仲がいいから大丈夫」というお言葉です。
 
 遺言書とは、亡くなられた方の最後の意思表示として、相続などの内容をあらかじめ指定しておくもので、一般的に「相続が争続」にならないようにする為、有効であると言われております。
 果たして遺言書は、どなたにも必要なものでしょうか。 

 私が相続手続きのお手伝いをさせていただいた方の中には、残念ながら相続人さま同士が、円満な関係ではない相続のケースもあります。その方々の橋渡しをするのが私の役目なのですが、「遺言書があれば、相続のお話し合いも違う方向になったのかもしれない」と、思ったことが無いわけではありません。

 では、こういうケースはどうでしょうか。
 お父様が亡くなり、すでにお母様は他界しておられた為、兄弟2人で相続をすることになり、相続財産を確認すると、預貯金とご自宅の土地と建物が遺されていました。
 遺言書が無い場合、法定相続と呼ばれる分割方法となりますので、兄弟がそれぞれ2分の1ずつの割合となります。
 兄弟二人は日頃から特に仲が悪いわけでは無く、円満に2分の1ずつでどのように相続するか、話し合いをしていました。
 
 そこへ、お父様の自筆遺言書が見つかり、内容を確認すると、「兄に不動産をすべて相続させ、弟は預貯金のすべてを相続させる」という内容でした。
 不動産をお金に換算した額と、預貯金の額が同程度なら、それほど問題は無かったかもしれませんが、明らかに預貯金の方が少なかった為、遺言書が優先とする兄と、公平に相続したい弟の間で、遺言書がきっかけで言い争いが生じてしまいました。

 今回は仮定のお話ですが、現実でもこのようなお話はあると思います。
 遺言書がきっかけで、兄弟に言い争いが生じていますので、遺言書が無い方がよかったのでしょうか?
 ご家族の事情や背景はそれぞれ異なりますし、それだけで遺言書があった方がよかったかどうか、ということは一概には論じられないと思われます。
 
 遺言書が無い場合は、遺されたご家族が一から協議をされて、それをまとめて「遺産分割協議書」に記し、全員が署名・押印をする必要があります。
 この時、相続人の方が遠方におられたり、協議の内容について意見に相違があった場合は、それが合意に至るまで相続手続きは完了しませんので、預貯金の解約や、不動産の名義を変更することは出来ませんし、場合によっては葬儀費用の捻出について、頭を悩ませることだってあり得ます。 

 それでも、うちの家族は仲がいいから話はうまくつくよ、お考えになるかもしれません。
 もちろん、すべてのご家族がそうであればいいのですが、残念ながらそうならないということが、現実では起こっています。
 
 それは、いわゆる「法定相続」というものが、2分の1とか3分の1などという、割合でしか決められておらず、それが預貯金なのか不動産なのかもわかりません。
 実際に、どのように2分の1や3分の1にするのか、というところで、ちょっとした意識のすれ違いが生まれてしまうのだと思われます。
 
 例えば、「兄は以前に父親から援助をしてもらった」とか、「自分は親と一緒に住んでいて、ずっとお世話をしてきた」などという思いは、誰でも少しは感じられるものではないでしょうか。
 例に挙げたことばかりでは無く、今までの経緯や思いというものは、それぞれの方に少なからずあるものだと思いますので、分割の協議をする時、その経緯や思いをどれだけ協議の内容に反映させるか、というところで、不公平感やすれ違いが生じてしまうのではないでしょうか。


 そのような時、遺言書がきっちりと遺されていれば、ご家族に対して安心や方向性を遺せるものになりますので、タイトルの問いかけに対して、有無だけで言いますと、私はあった方がよいと考えます。
 ですが、ただあればよい、というのではなく、「遺言書を作成して、その内容をご家族にじっくりと説明しておければ、一番良かったのではないか」、と考えます。

遺言書が本当に活かされるような家族関係を


 一般的に、自筆で書いた遺言書は、封をして保管するものだと思いますが、「ご自身に万一のことがあるまで、その中身はご家族には知らせない」という場合、その遺言内容によりましては、将来ご家族の間で紛争になってしまう場合もあります。
 実際に、「遺言書の内容があまりに不公平なので、法定相続で分割し直すことは出来ますか」と、ご相談をされた方もいらっしゃいました。

 遺言書と言うのは、その方の最後の意思表示ですので、どのような内容にされるかはもちろん自由です。
 ですが、遺されたご家族が、その遺言書の内容を知るのが亡くなってからの場合、「なぜそのような内容にしたのか」という説明を、ご本人の口から聞くことは出来ません。
 そのような時、ご家族が想定していた範囲や、いわゆる法定相続の配分などと、あまりにもかけ離れている内容だった場合、不満を感じられたり、争いの原因になってしまうのではないでしょうか。

 遺言書を作られる大きな理由の一つは、遺されたご家族に無用の争いが起きないように、との願いが込められていると思います。
 どのような内容にするか、ということはもちろん大切ですが、それだけではなく、「遺言書をつくったということ」、「なぜそのような内容にしたか」について、『ご自身のお考えを伝えられる家族関係である』ことが、遺言書を活かし、その内容よりも一番の紛争の防止になると思うのですが、いかがでしょうか。

 
 次回は、「優しい遺言書のつくり方 ~過去の遺言書がある場合、相続財産の具体的記載について~」をお伝えしたいと思います。

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