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コラム

優しい遺言書のつくり方③ ~祭祀承継者、遺言執行者の指定について~

優しい遺言書

2018年8月7日 / 2018年9月28日更新

 皆様、こんにちは。
 今回も、遺言書に記載した方がよいと思われる項目の続きについて、お伝えさせていただきます。

⑤祭祀承継者(さいししょうけいしゃ)の指定
 祭祀承継者とは、祖先の祭祀を主宰する方を指し、お墓や仏壇などを守り、以後の法事を営んでいく方、ということになるかと思います。

 ですが、ただ家の法事を取り仕切る方という訳でもありません。
 民法では、897条で「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定(相続財産は相続人が承継するという規定)にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する」と規定しております。

 これは、祭祀財産(位牌、仏壇、墓石、墓地等)は、仮に財産的価値があった場合でも、それは相続財産に含まない、ということになりますので、亡くなった方の財産を相続する方と、仏壇やお墓などを引き継ぐ方が同じとは限らない、ということになります。

 祭祀承継者といいますと、「家を継ぐ人(例えば長男)が、それらも引き継ぐもの」という理解が一般的ですが、相続人や親族の方に限られている訳ではありませんし、仮に名字の違う方であっても、承継することが出来ます。
 
 民法の規定を整理致しますと、次の順番で決定されることになります。
 1、被相続人(亡くなった方)の指定した方
 2、慣習に従って主宰すべきと決定した方
 3、慣習が明らかでない場合は、家庭裁判所が定めた方

 これらを遺言書に記載するところの意味は、遺言者さまの葬儀や、その後の法事における役割と費用の支出等について明確になっていない場合や、位牌や墓石を誰がお世話していくのか、というところで実際に揉め事になっている例があるからです。
 
 例えば、葬儀費用を亡くなった方が事前に準備されていなかった場合、それは誰が支出すべきものでしょうか。
 ア、相続人全員で負担する
 イ、祭祀承継者(喪主)が負担する

 こちらは法律に明確な規定はありませんので、この費用が「相続に関する費用に含まれるかどうか」というところで、見解に違いがあります。
 これが含まれるとした場合、「ア、相続人負担」ということになり、含まれないとすれば、「イ、祭祀承継者(喪主)負担」ということになります。
 今のところ、実際の裁判等では、「イ、祭祀承継者(喪主)負担」の見解が有力とされております。

 また、香典につきましては、相続財産に含まれないとするのが通説となっており、「喪主(祭祀承継者)や遺族への贈与」という性格になりますので、それを葬儀費用に充てることは、当然に参列者が認識しているという理解が一般的です。

 ただ、香典で葬儀費用を支出した場合、残金が発生した場合の帰属先や、不足が発生した場合の負担者が誰なのか、というところでも、争いの原因となっておりますし、そもそも葬儀費用を香典より支出するかどうか、ということが相続人さま同士の見解が分かれていて、争われる場合もあります。

 これらの争いを防止するためにも、ご家族に対する配慮が必要な項目であると思われます。
 
⑥遺言執行者の指定
  遺言執行者とは、「相続財産の管理や、遺言の内容を実現する為の一切の行為をする権利義務を有する」と規定され、相続人の代理人とみなされる立場の方となります。
 こちらは、遺言者さまが指定する場合と、相続人等の利害関係人からの請求により、家庭裁判所によって選任される場合があります。
 
 例えば、遺言書があった場合でも、相続人の方が多かったり、遺言書の解釈や内容に関して、意見の対立や紛争があったりする場合などですと、不動産や預貯金・有価証券等の解約・名義変更の手続きにおいて、遺言書の内容通りに手続きがすすむとは限りません。

 そのような場合に、相続人の代理人とみなされる立場の遺言執行者が選任されていますと、相続人は相続財産の管理や処分する権限を失うとされております。
 これによって、遺言者さまの遺した遺言内容の円滑な実現が期待出来ますし、一部の金融機関や有価証券の解約・名義変更手続きにおいて、相続人全員の同意を求めらた場合にも、相続人全員の代理人としての対応が期待されます。

 また、遺言書には自身の財産の引き継ぎ方を指定することは出来ますが、葬儀や埋葬方法等に希望があった場合、それは遺言書に本来記載すべき内容とは離れますので、ただ遺言書に記載するだけでは、あくまで本人の希望に過ぎず、それが実際に実現される保証はありません。

 そのような時、遺言内容全般の実現を託す方として、遺言執行者と「死後事務委任契約」を別途結んでおくことで、死亡時の諸手続きや葬儀の手配など、相続財産の管理や処分以外のことも、あらかじめ依頼する事が出来ます。
 
 遺言執行者の指定は、遺言でないと出来ない規定となっておりますが、仮に遺言執行者を指定されていても、その方が絶対に引き受けなければならない訳ではありませんので、依頼をされる前に、引き受けていただけるかどうか、お打合せが必要となります。

 また、遺言執行者は未成年や破産者以外であれば誰でも就任出来ますし、複数でも構いません。
 その場合は、共同で業務を行っていただいてもいいですし、最初の方の後任という役割でも大丈夫です。

 ご家族の事を想ってつくられた遺言書も、その実現までをご自身で見届ける事は、残念ながら誰にも出来ません。
 また、死亡時の手続きや葬儀の手配等に慣れているという方も、そう多くはおられないのではないでしょうか。

 遺言書の内容を確実に実現すると共に、遺されたご家族に無用の心配をさせないような配慮が、遺言執行者の指定であると思われます。


 次回は、「優しい遺言書のつくり方 ~付言について~」をお伝えさせていただきます。
 よろしくお願い致します。

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