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優しい遺言書のつくり方③ ~祭祀承継者、遺言執行者の指定について~

2018年8月7日 公開 / 2021年1月8日更新

テーマ:遺言書

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: お墓遺言書 作成遺言書 書き方

 皆様、こんにちは。
 今回も、遺言書に記載した方がよいと思われる項目の続きについて、お伝えさせていただきます。

5、祭祀承継者(さいししょうけいしゃ)の指定

 祭祀承継者とは、祖先の祭祀を主宰する方を指し、お墓や仏壇などを守り、以後の法事を営んでいく方、ということになるかと思います。

 ですが、ただ家の法事を取り仕切る方という訳でもありません。
 民法では、897条で「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定(相続財産は相続人が承継するという規定)にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する」と規定しております。

 これは、祭祀財産(位牌、仏壇、墓石、墓地等)は、仮に財産的価値があった場合でも、それは相続財産に含まない、ということになりますので、亡くなった方の財産を相続する方と、仏壇やお墓などを引き継ぐ方が同じとは限らない、ということになります。

 祭祀承継者といいますと、「家を継ぐ人(例えば長男)が、それらも引き継ぐもの」という理解が一般的ですが、相続人や親族の方に限られている訳ではありませんし、仮に名字の違う方であっても、承継することが出来ます。
 
 民法の規定を整理致しますと、次の順番で決定されることになります。
 1、被相続人(亡くなった方)の指定した方
 2、慣習に従って主宰すべきと決定した方
 3、慣習が明らかでない場合は、家庭裁判所が定めた方

 これらを遺言書に記載するところの意味は、遺言者さまの葬儀や、その後の法事における役割と費用の支出等について明確になっていない場合や、位牌や墓石を誰がお世話していくのか、というところで実際に揉め事になっている例があるからです。
 
 例えば、葬儀費用を亡くなった方が事前に準備されていなかった場合、それは誰が支出すべきものでしょうか。
 ア、相続人全員で負担する
 イ、祭祀承継者(喪主)が負担する

 こちらは法律に明確な規定はありませんので、この費用が「相続に関する費用に含まれるかどうか」というところで、見解に違いがあります。
 これが含まれるとした場合、「ア、相続人負担」ということになり、含まれないとすれば、「イ、祭祀承継者(喪主)負担」ということになります。
 今のところ、実際の裁判等では、「イ、祭祀承継者(喪主)負担」の見解が有力とされております。

 また、香典につきましては、相続財産に含まれないとするのが通説となっており、「喪主(祭祀承継者)や遺族への贈与」という性格になりますので、それを葬儀費用に充てることは、当然に参列者が認識しているという理解が一般的です。

 ただ、香典で葬儀費用を支出した場合、残金が発生した場合の帰属先や、不足が発生した場合の負担者が誰なのか、というところでも、争いの原因となっておりますし、そもそも葬儀費用を香典より支出するかどうか、ということが相続人さま同士の見解が分かれていて、争われる場合もあります。

 これらの争いを防止するためにも、ご家族に対する配慮が必要な項目であると思われます。
 

6、遺言執行者の指定

 遺言執行者とは、遺言に記載された内容を実現する役割の方です。
 改正された民法では、遺言執行者の主な権限について次のように規定しております。

〇第1012条第1項
「遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。」
〇同第2項
「遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。」

 また、「○○を~へ相続させる」という、遺言で一般的に用いられる表現がありますが、これは「特定財産承継遺言」といいます。
 その遺言に関する権限については、次の様に規定しております。

〇第1014条第2項
「遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第899条の2第1項(共同相続人が権利を承継しても、登記などの対抗要件を備えなければ第三者に対抗できない)に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。」
〇同第2項
「前項の財産が預貯金債権である場合には、遺言執行者は、~その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申入れをすることができる。~」
 
 これによりまして、不動産の相続登記、預貯金の解約など、遺言に記載された手続きにつきまして、遺言執行者の権限で行えることを規定しております。

 他に、民法第1013条第1項で「遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をする事ができない。」という規定もあり、一部の相続人による相続財産の勝手な処分を防止することが出来ます。

遺言執行者の重要性とは

 例えば、不動産を相続人以外の方(孫や甥姪など)に引き継いでもらう遺言の場合、遺言執行者が指定してありませんと、その方と全ての相続人の方が共同で手続きをする必要があります。
 この為、相続人の方々との関係性によっては、その協力が得られずに、遺言を実現することが困難になる場合もあります。

 また、遺言書には自身の財産の引き継ぎ方を指定することは出来ますが、葬儀や埋葬方法等に希望があった場合、それは遺言書に本来記載すべき内容とは離れますので、ただ遺言書に記載するだけでは、あくまで本人の希望に過ぎず、それが実際に実現される保証はありません。

 そのような時、遺言内容全般の実現を託す方として、遺言執行者となる方と「死後事務委任契約」を別途結んでおくことで、死亡時の諸手続きや葬儀の手配など、相続財産の管理や処分以外のことも、あらかじめ依頼する事が出来ます。
 
 なお、遺言執行者は、未成年や破産者以外であれば誰でも就任出来ますし、複数でも構いません。
 その場合は、共同で業務を行っていただいてもいいですし、最初の方の後任という役割でも問題ありません。

 ただ、遺言執行者は遺言で指定された方が必ず引き受けなければならない、という訳ではありませんので、あらかじめ引き受けていただけるかどうか、確認をしておく必要があります。


 次回は、「優しい遺言書のつくり方 ~付言について~」をお伝えさせていただきます。
 よろしくお願い致します。

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