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  1. 優しい遺言書のつくり方③ ~祭祀承継者、遺言執行者の指定について~
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コラム

優しい遺言書のつくり方③ ~祭祀承継者、遺言執行者の指定について~

2018年8月7日 公開 / 2019年6月10日更新

テーマ:遺言書

 皆様、こんにちは。
 今回も、遺言書に記載した方がよいと思われる項目の続きについて、お伝えさせていただきます。

⑤祭祀承継者(さいししょうけいしゃ)の指定
 祭祀承継者とは、祖先の祭祀を主宰する方を指し、お墓や仏壇などを守り、以後の法事を営んでいく方、ということになるかと思います。

 ですが、ただ家の法事を取り仕切る方という訳でもありません。
 民法では、897条で「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定(相続財産は相続人が承継するという規定)にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する」と規定しております。

 これは、祭祀財産(位牌、仏壇、墓石、墓地等)は、仮に財産的価値があった場合でも、それは相続財産に含まない、ということになりますので、亡くなった方の財産を相続する方と、仏壇やお墓などを引き継ぐ方が同じとは限らない、ということになります。

 祭祀承継者といいますと、「家を継ぐ人(例えば長男)が、それらも引き継ぐもの」という理解が一般的ですが、相続人や親族の方に限られている訳ではありませんし、仮に名字の違う方であっても、承継することが出来ます。
 
 民法の規定を整理致しますと、次の順番で決定されることになります。
 1、被相続人(亡くなった方)の指定した方
 2、慣習に従って主宰すべきと決定した方
 3、慣習が明らかでない場合は、家庭裁判所が定めた方

 これらを遺言書に記載するところの意味は、遺言者さまの葬儀や、その後の法事における役割と費用の支出等について明確になっていない場合や、位牌や墓石を誰がお世話していくのか、というところで実際に揉め事になっている例があるからです。
 
 例えば、葬儀費用を亡くなった方が事前に準備されていなかった場合、それは誰が支出すべきものでしょうか。
 ア、相続人全員で負担する
 イ、祭祀承継者(喪主)が負担する

 こちらは法律に明確な規定はありませんので、この費用が「相続に関する費用に含まれるかどうか」というところで、見解に違いがあります。
 これが含まれるとした場合、「ア、相続人負担」ということになり、含まれないとすれば、「イ、祭祀承継者(喪主)負担」ということになります。
 今のところ、実際の裁判等では、「イ、祭祀承継者(喪主)負担」の見解が有力とされております。

 また、香典につきましては、相続財産に含まれないとするのが通説となっており、「喪主(祭祀承継者)や遺族への贈与」という性格になりますので、それを葬儀費用に充てることは、当然に参列者が認識しているという理解が一般的です。

 ただ、香典で葬儀費用を支出した場合、残金が発生した場合の帰属先や、不足が発生した場合の負担者が誰なのか、というところでも、争いの原因となっておりますし、そもそも葬儀費用を香典より支出するかどうか、ということが相続人さま同士の見解が分かれていて、争われる場合もあります。

 これらの争いを防止するためにも、ご家族に対する配慮が必要な項目であると思われます。
 
⑥遺言執行者の指定
  遺言執行者とは、遺言に記載された内容を実現する役割の方をさします。
 民法1012条第1項では、「遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する」、同第2項では「遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる」と規定しております。
 
 遺言者さまが指定していない場合でも、相続人等の利害関係人からの請求により、家庭裁判所によって選任することも出来ます(民法第1010条)。
 
 特に、不動産を相続人以外の方(例えば、孫)に遺すという遺言の場合、遺言執行者を指定していませんと、その方と全ての相続人の方が共同で手続きをする事になります。
 この為、相続人の方々との関係性によっては、その協力が得られずに、遺言内容の実現が困難になる場合があります。

 また、民法第1013条第1項で「遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をする事ができない。」と規定しておりますので、一部の相続人による、相続財産の勝手な処分を防止する効果も期待できます。

 他に、遺言書には自身の財産の引き継ぎ方を指定することは出来ますが、葬儀や埋葬方法等に希望があった場合、それは遺言書に本来記載すべき内容とは離れますので、ただ遺言書に記載するだけでは、あくまで本人の希望に過ぎず、それが実際に実現される保証はありません。

 そのような時、遺言内容全般の実現を託す方として、遺言執行者となる方と「死後事務委任契約」を別途結んでおくことで、死亡時の諸手続きや葬儀の手配など、相続財産の管理や処分以外のことも、あらかじめ依頼する事が出来ます。
 
 なお、遺言執行者につきましては、遺言で指定された方が絶対に引き受けなければならない訳ではありませんので、遺言に記載する前に、必ず引き受けていただけるかどうかの確認をしておく必要があります。

 また、遺言執行者は未成年や破産者以外であれば誰でも就任出来ますし、複数でも構いません。
 その場合は、共同で業務を行っていただいてもいいですし、最初の方の後任という役割でも大丈夫です。

 ご家族の事を想ってつくられた遺言書も、その実現までをご自身で見届ける事は、残念ながら誰にも出来ません。
 また、死亡時の手続きや葬儀の手配等に慣れているという方も、そう多くはおられないのではないでしょうか。

 遺言書の内容を確実に実現すると共に、遺されたご家族に無用の心配をさせないような配慮が、遺言執行者の指定であると思われます。


 次回は、「優しい遺言書のつくり方 ~付言について~」をお伝えさせていただきます。
 よろしくお願い致します。

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