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浅井知彦

コンクリート住宅設計のプロ

浅井知彦(あさいともひこ) / 一級建築士

レヴォントリ株式会社 一級建築士事務所

コラム

暖炉、薪ストーブのある家について本気で考えてみる

2015年1月31日 公開 / 2020年5月12日更新

テーマ:住宅

コラムカテゴリ:住宅・建物

暖炉、薪ストーブについては、以前にも書いています。

暖炉、薪ストーブ・・・実用的じゃなくても欲しくなる。

建築設備、実際には幾らかかる?(ジャグジー、シャワールーム、サウナ、暖炉、薪ストーブ)

ここに書いたことを簡単に纏めると、「暖炉、薪ストーブは魅力的だけど結構大変」「導入費用は100万円~」・・・こんな感じでした。

今回は、それでも本気で暖炉、薪ストーブのある家を建てたいようと考えている人のためのお話です。

薪ストーブ
写真はすべて株式会社メトス(旧名:中山産業)さんで取り扱っている製品です。
ここは、昔からデザイン性の高い海外の暖炉、薪ストーブを取り扱っている会社です。


私の自宅もリビングに薪ストーブが置けるように、ちょっとだけ考えて作られています。

設計時にはリビングの角に薪ストーブを置いて、煙突は現在換気扇の穴を使って・・・と考えていましたが、これがなかなか難しい。


そこで、実際に暖炉、薪ストーブを使いこなすために考えておかなければいけないことについて、以下にまとめてみました。


◆意外と暖かくないこと

確かに、ストーブや暖炉の前は暖かくなります。一日中火を燃やしていると、家全体が暖まってきます。

しかし、暖房器具として即効性はありません。

部屋全体を暖めるには、かなりの時間がかかります。


◆煙突掃除

年1回以上は煙突掃除が必要です


◆周囲は汚れる

どうしても細かい灰などが飛び散るので、周囲はある程度、汚れます。


◆燃料費が掛かる

暖炉、薪ストーブ用の薪(広葉樹)を購入して、暖房器具として利用するなら、1日1,000円くらいの燃料費がかかります。


◆スペースをとる

暖炉や薪ストーブは、本体だけでなくその周囲に薪の置き場、用具の置き場も必要です。


◆冬以外は邪魔

壁に埋め込まれた暖炉はそれほど気になりませんが、シーズンオフの薪ストーブ、煙突は、結構邪魔です。

冬以外は取り外すという手もありますが、その手間を考えると、現実的には難しいと思います。


◆安全性

ひとつは火気の安全性。火を使うのですから、本来はあまり目離ししたくないのですが、かといって一日中ストーブの前に居る訳にもいきません。

また、薪の保管などについても、家のまわりに可燃物である薪を積み上げておくのは、あまり良い気がしません。

※さらに、以下は細かい話になりますが・・・

薪ストーブは、建築法規上は「暖房器具」であり「住宅設備」ではないようです。

たとえば、ガスコンロは「住宅設備」ですから、キッチンには不燃材の使用などの安全対策を求められます。

しかし「暖房器具」である薪ストーブは、直接的に建築法規上の制限を受けません(告示等はあるようですが)。

その結果、安全装置の付いたガスコンロより、裸火の薪ストーブの方が防火安全上の規制が「緩い」ように感じます。

このあたりは設置業者、設計者、そしてなによりそこに住む人に、自主的な安全性の確保が求められているのだと思います。

暖炉

ここまではネガティブなことを書いてきました。

しかし、寒い冬の日、ゆれる炎をみながら過ごす時間は素敵です。

いくら前時代的な暖房器具といっても、良い面もたくさんあります。


◇静か

空気を動かすエアコンなどに比べて、圧倒的に静かです。

時間がゆっくり流れるような、穏やかな暖房器具です。


◇暖かさにムラがあるところが良い

暖炉や薪ストーブは、部屋全体の空気を均一にかき混ぜる暖房器具とは違います。

近づくと暖かい。離れると寒い。

これは欠点でもありますが、慣れると結構気持ちよいものだと思います。

じんわりした輻射熱の暖かさは、部屋全体を暖めるより、身にしみるものだと思います。


◇見た目がよい

そのままです。ゆれるオレンジ色の炎を見ていると、心が落ち着きます。

薪ストーブ

最後に本気で暖炉、薪ストーブのある家を建てたい人に対してのアドバイスを書いていきます。


・時間に余裕はありますか?

手間の掛かる暖房器具です。暖まるまでにも時間がかかります。

家にいる時間が長い、時間に余裕のある生活をしている人でないと、充分に楽しめないかもしれません。


・スペースに余裕がありますか?

安全性を考えると、ストーブの廻りの床や壁はタイルやレンガなどを使った方が良いでしょう。

狭いリビングの中に設置するより、部屋の一部に土間スペースのようなところを作って、そこに設置した方が邪魔にならないと思います。

薪の保管スペースも必要です。

これらを考えると、家のスペースには余裕があった方が良いでしょう。

郊外の家、別荘、山小屋などが最適かもしれません。


・予算に余裕があると良いですね

厳寒地以外では、暖房器具としてのコストを考えると、どうしても高くつくと思います。

趣味性の高いものですから、「ある程度」コストは度外視して考える必要があるかもしれません。

薪ストーブ、暖炉はヨーロッパが本場で、デザイン性の高い、魅力的な周辺機器もたくさんあります。

更に、調理器具として使うためのフライパン、オーブンなどもあります。

これらを買いそろえていく楽しみもありますので、予算面では余裕をもって考えて頂ければと思います。

薪ストーブ

薪ストーブ自体は、数十万円から購入出来ます。

しかし、「暖炉のある家」「薪ストーブのある生活」を楽しむためには、それに合わせた家作りが大事だと思います。

「普通の家」の一部を改造して強引にこれらを設置しても、満足のいく結果が得られるのか、疑問です。

暖炉、薪ストーブのある家を本気で考えている方は、是非、最初の設計段階から建築士に相談してみてください。

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http://mbp-japan.com/hyogo/revontulet/column/25680/

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