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このコラムを書く前に、この部屋に本が何冊くらいあるか、調べてみました。
ざっと数えてみた結果、単行本、文庫本、コミック、辞典類、専門書など、全部合わせて約4000冊。
定期的に減らしていますし、引っ越しではかなり大胆に捨てたのですが、いつの間にか少し増えていました。
本1冊あたり300gくらいを平均の重さとすると、全部で1.2トンです。
・・・相当な重さになりますね。
今回は、書庫のある家について書いていきます。
本の重さはピアノ以上
本好きの人、仕事柄、資料が必要な人などは1万冊以上本があるという人も、結構居るのではないでしょうか。
本の収納は、結構場所をとります。
そして重さも、相当なものです。
以前、楽器を演奏する家の話で、ピアノの重さについて書いたことがあります。
【参考】楽器を演奏するための部屋/ホームスタジオを作る方法
ここで「グランドピアノの重さは、大きなものなら400kg以上」と書きましたが、本の重さはそれ以上になります。
移動書架は重い
実は、普通の住宅を設計していく上で、床の荷重対策が一番必要になる場所というのは、「書庫」です。
たとえば「集密収納」とか「移動式本棚」といわれる収納能力の高いものは、本を一杯に詰めると通常の設計荷重を超えてしまいます。
一例を挙げてみます。
写真は、通信販売会社ディノスのスライド式本棚です。
この本棚のサイズは横幅98cm、奥行き45cmですから、本棚の床面積は
0.98 × 0.45 = 0.441平方メートル
になります。
収納能力は約800~1200冊とありますから1冊300g、1000冊収納と仮定すると、
300g × 1000 = 300000g
つまり、本の重さだけで300kgになります。
これを1平方メートルあたりの重量を計算すると、
300kg ÷ 0.441 = 約680kg/平方メートル
です。
通常、住宅の居室床の設計荷重は180kg/平方メートルですから、680kgというのは設計荷重を大幅に超えています。
本で埋め尽くされた部屋
部屋の全面に本棚を詰め込んでしまえば、通常の設計では床は保たないでしょう。
しかし現実的には「本棚で埋め尽くされた部屋」というのは、普通の住宅ではあまり無いと思います。
従って部屋全体の「平均荷重」で考えれば、相当な無茶をしない限り「床が抜ける」という可能性はかなり低いでしょう。
だからといって、たとえば木造住宅で部屋の中心付近に、前述のような大型本棚を複数並べれば、時間が経つに従って「床がたわんでくる」可能性が高いと思います。
通常の木造住宅の場合、無造作に大型の本棚をたくさん並べるというのは考えものです。
本の多い家では、設計段階から収納方法を考えておいた方が良いでしょう。
設計段階で考えておくことが大事
本の収納について、家を設計するとき考えておくべきことを挙げていきます。
なるべく壁、柱に近い位置に本棚を作る
荷重位置の問題です。
床のたわみを防止するためには、部屋の端、柱や構造壁の近くに重量物を置く方が良いでしょう。
壁を使って高さ方向に収納を増やす
スペースの問題です。
折角家を建てるのですから、高さ方向に収納を増やした方が、部屋を広く使えます。
作り付けの本棚は、地震対策としても有効です。
壁に近ければ、荷重対策にも有利です。
写真は「本棚専門店」という通販サイトの商品です。
大型の移動書架を使うときは、床の強化を
どうしても蔵書が多い方には、移動書架、集密収納、引き出し収納をおすすめします。
写真はコクヨの移動式本棚です。
家庭用ではありませんが、本当に蔵書の多い方は、このタイプを検討しても良いかもしれません。
本に埃が掛からない、本が日焼けしない点でも、おすすめです。
重量鉄骨あるいは鉄筋コンクリート住宅をお勧めします
本の多い人が建てる家については、家の設計の初期段階で建築士にしっかり相談しておいてください。
何冊くらいの本があるのか、どうやって収納したいのか・・・その他「頻繁に出し入れするのか?」「背表紙は見えた方が良いのか?」「日焼けしないように保管したいのか?」「将来もっと増えそうなのか?」なども使い方も含めて伝えてください。
建築士はそれに合わせて、家の設計を行います。
また、本のたくさんある家を考える場合、家の構造は剛性が高い重量鉄骨あるいは鉄筋コンクリートをお勧めします。
木造でも柱や梁を増やせばある程度対応することは可能ですが、どうしても「たわみ」「きしみ」が気になる場合があると思いますので。
マンションなどでは「家が狭いので本が買えない」という話も聞きます。
折角の戸建て注文住宅なのですから、今後本の購入を躊躇わないような収納能力に余裕のある家を計画しては如何でしょうか。