コラム
同一労働同一賃金、その導入の流れ
2024年1月17日
先ずは、適正な運用をするための注意点から
前回のコラムでは、同一労働同一賃金の基本的な考え方や対象となる従業員の範囲等を中心に解説してきましたが、今回は「その導入の流れ」を解説していきたいと思います。
同一労働同一賃金の問題に取り組む際に、この制度には3つの重要な柱があって、そのうちの2つ、不合理な待遇差の禁止と、待遇に関する説明義務の強化について(残る1つは行政側が執る措置になります。)速やかに対策を講じる必要があるとお伝えしました。
今回はこの説明義務と制度施行に向けての対応手順を示していきたいと思います。
それに加えて制度導入を進めていく中で、同一労働同一賃金の前提となる「職務内容」が同じかどうか?が重要になってきますので、合わせて見ていきましょう。
職務内容とは何のことを言っている?
この職務内容とは、①業務内容と②責任の程度という2つの柱から成り立っています。
①の職務内容とは、仕事の内容そのものであり、同じ業務内容といえるのかどうかは、厚生労働省が発表している職業分類の細分類を目安として確認し、主な業務を比較して、実質的に同一といえるのかを判断します。
②の責任の程度について、例えば正規従業員と短時間・有期雇用従業員が同じ業務をしていたとしても、部下に指揮命令を行う権限 やトラブル発生時の対応が求められること等、責任の程度に違いが見られる場合には、「職務の内容」は 異なると理解され、その「職務の内容」の違いに応じた待遇差については許容されることになります。
責任の程度とは、主に次のような5つの内容が挙げられます。
① | 与えられている権限の範囲(単独で契約締結可能な金額の範囲、管理する部下の数、決裁権限の範囲等) |
② | 業務の成果について求められる役割 |
③ | トラブル発生時や臨時・緊急時に求められる対応の程度 |
④ | ノルマ等の成果への期待の程度 |
⑤ | 所定外労働の有無及び頻度 等 |
待遇差を説明する義務があります
企業側は、正規従業員と短時間・有期雇用従業員の待遇の違いについて不合理ではないかどうかを検証することとともに、短時間・有期雇用従業員の雇い入れ時と、当該従業員から求めがあった場合に、その待遇差の内容や理由について短時間・有期雇用従業員へ説明することが事業主の義務となったことが、重要なポイントです。
中小企業においては2021年4月の法施行に向けて、計画的に準備を進めることが求められていました。現在も対応は原則同じの流れになります。以下に5つにまとめてみます。
1 | 雇用形態区分の整理 | 正規従業員、パートタイマー従業員、契約従業員、嘱託従業員等 |
2 | 同一労働同一賃金の対象となる待遇の洗い出し | 基本給、手当、賞与、退職金、休暇、福利厚生、教育訓練等 |
3 | 雇用形態による待遇差の確認 | 支給の有無、金額、支給要件、決定基準、計算方法等 |
4 | 待遇差の根拠を確認したうえで、待遇差の妥当性について検討 | 人事関連資料、関係者へのヒアリング、職務評価等 |
5 | 待遇差が妥当ではない場合の対応策の検討、待遇差の是正 | 就業規則等の改定、説明文書の作成等 |
正規従業員、パートタイマー従業員、契約従業員、嘱託従業員等、雇用形態別にどのような待遇の違いがあるのかを 整理するところまで(1~3)は、自社内である程度対応可能と思われますが、問題はその待遇差が妥当なのかどうか(4)、どのように待遇差を見直せばよいか(5)、のなかなか判断がつかない2点です。そこでこれらを解決するための基準があります。
厚生労働省が定めたガイドラインと裁判例を踏まえた各待遇の対応が具体的に例示されています。詳細はそちらでご確認お願い致します。以上が同一労働同一賃金の導入についての一般的な流れになります。
今回のまとめ
同一労働同一賃金の制度導入を円滑に進めていく上での注意点とその流れを中心に解説してきました。同一労働同一賃金の前提となる「職務内容」が同じかどうか?が重要になってきますので、そこから丁寧に説明をしていくことが求められています。
今回お伝えしたい企業側がやるべきことは2つあります。
①職務内容と責任の程度を上記に挙げたように明らかにすること
②1から5まで挙げたように「雇用形態区分の整理から始まり、待遇差が妥当ではない場合の対応策の検討、待遇差の是正」までを体系立ててしっかり説明義務を果たすことの2点になります。
この同一労働同一賃金という制度は企業側が従業員側に対し、丁寧に説明することが義務付けられていますので、その求めがあったときは丁寧に説明しなければなりません。
以上、「働き方改革の関連コラム」をシリーズで連載してきましたが、企業経営者の皆さんにとってお分かりいただけましたか?同一労働同一賃金のことだけでなく、労務管理にまつわる様々な事についてその準備や体制作りの具体的なお手伝いができる味方は、社会保険労務士だけです。
では次回のコラムにてお会いしましょう。お楽しみに!
出典:早わかり!同一労働同一賃金まるわかりBOOK 東京商工会議所
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