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コラム
自主回収の報告義務化による変化と 正しい食品表示をするための取り組み (5)
2023年9月11日
食品関連事業者としてやるべきこと
しかし各社がさまざまな取り組みをされているにも関わらず、それでもなお100%正しい表示ができるかと言えば、そうは言い切れない。人が人である限り、人為的なミスはどれだけ注意していても起こる可能性があり、またそれをすべて事前に発見するというのは、簡単なことではない。自主回収はどの企業でも起こる可能性があると考えるべきであり、実際に自主回収情報を見ると大手企業の名前も散見される。
さらに製造業者や卸売業者がどれだけ正しい作業をしても、間違いが起こってしまうケースがある。それは原材料や製品の仕入先からの規格書などの情報に誤りがあった場合や、無断で仕様を変えられる、サイレントチェンジのようなケースだ。これはいくら書類で細かく確認しても、法令順守した表示を作成しようとしても、気付くことが難しく、実際に自主回収のニュースなどでこのようなケースを見ることがある。
ここで一つ知っておいていただきたいのが、仮に原材料メーカーの規格書の間違いで、アレルギー表示の漏れなどの食品表示不良があり、自主回収することになった場合も、製造者や加工所の情報は確実に公開されてしまうということだ。
厚生労働省のホームページにある「公開回収事案検索」を見ていただくと、公開されている情報の中に「製造所又は加工所情報」という項目がある。
さらに回収担当部門情報という項目があるが、おそらくここもミスをした原材料メーカーではなく、製造者や販売者がなるケースが多いと思われる。回収を他社に委託することもできるが、自主回収をする製品の卸先や販売先を把握しているのは、製造者や販売者であり、消費者へ速やかに情報公開して自主回収の手続きを進める部門としては、多くのケースでその方が適任なためである。 そう考えると、ミスをした原材料メーカーの名前や情報は公開されないまま、自主回収が進められる可能性もあるということになる。
もちろん製造者や販売者に落ち度がなく、原材料メーカーのミスが原因で自主回収したのであれば、それに対して損害賠償を求めることはできると思う。ただ世間的にはその自主回収が、製造者や販売者の不祥事と映ってしまう可能性が高く、理不尽に感じられる方もいらっしゃるかもしれない。このような事態を防ぐためにできることは何かを考えると、結論としては、信頼できる企業と取引することになるのではないだろうか。
最後に、正しい食品表示をするための取り組みからは外れてしまうのだが、食品関連事業者として、こういった自主回収制度についての理解を深め、万が一発生した際の対応マニュアルなどを作成し準備しておくことも重要だ。幸い私が製麺メーカーのコンサルタントになってからは、まだ自主回収を行うような事案は発生していないが、マニュアルにて自主回収時の役割分担やフローについてまとめており、万が一のときには迅速に動けるよう準備をしている。年1回は重大事故訓練も行い、自主回収を想定した動きの確認、マニュアルの不備にも目を配っている。
自主回収をすることになれば、当然大きな損害を受けることになるが、それを理由に、消費者への健康危害の恐れがあるにも関わらず、自主回収をしない、報告義務に違反することは、食品関連事業者として決してあってはならない。本稿が、食品関連事業者の皆様が安全安心な商品を提供すること、万が一自主回収をするような事案が発生した際に、適切な対応をするための一助となれば幸いである。
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