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コラム

自主回収の報告義務化による変化と 正しい食品表示をするための取り組み (4)

2023年9月7日

テーマ:HACCP

コラムカテゴリ:ビジネス

製造業者での食品表示の間違いを防ぐための取り組み

 卸売業者・スーパーと製造業者(製麺メーカーなど)での食品表示の確認において、一番大きな違いは、レシピ(配合率)や添加物の使用目的(用途名)を考慮して、原材料についての表示を作成するかどうかだろう。製造業者での食品表示作成において、一番手間がかかり、また安全面でも特に注意が必要なのが、この原材料名や添加物の表示になる。まず製造業者での食品表示作成は、原材料のメーカーや仕入先からの規格書の取得などの情報収集から始まる。そこにある原材料の表示例や、アレルゲン、添加物などの情報が、原材料の表示作成 においての基本情報となり、製品の配合率や添加物の用途名を計算・考慮しながら、表示作成していくことになる。当然、自主回収理由の上位である、アレルギー表示の間違いがないように注意することも重要だ。
 これらは手作業で行うと、さまざまな計算や食品表示の知識が必要になり、人為的なミスが起こる可能性も高くなるため、食品表示の作成をアシストしてくれるような、システムの導入も、表示間違いを防ぐための有効な手段になる。「食品大目付そうけんくん」というシステムなどは、作業効率や間違い防止としての効果は高く感じた。
 前回、添加物表示には複雑な面があり、正しく表示されていないケースがあったと記載したが、「食品大目付そうけんくん」を使用して、各原材料のメーカーや仕入先から所定のフォーマットにて規格書を取得すれば、自動で配合率計算や法令に沿った表示作成をしてくれるので、大いに助けられる。
 ただこういったシステムを使用しても、元のデータが間違えていれば意味はないし、また作業中のミスによって表示間違いが起こる可能性があるので、食品表示作成後には複数人の目によって、二重三重のチェックを行うことが重要だ。
 また製造業者の立場で、注意が必要なこととして、図1(※前々回の記事参照)の食品の自主回収理由の2位にある、期限表示(消費期限や賞味期限)の誤記がある。期限表示をする方法は多種多様にあり、それぞれ注意するべき部分は変わってくる。アナログな方法としては、例えばサランラップで包まれた購買の焼きそばパンに貼ってあるような、消費期限の みのシールなどがある。これはおそらく手動で日にちを合わせて、ハンドラベラーでシール貼付している場合が多いと思うが、これはもう作業者が注意するしかない。
 最近ではこのようなアナログな表示は減ってきており、食品の一括表示ラベルに期限表示が印字されていたり、包装機で作業をする際に機械で印字されたりするのが、主流になってきている。このように一括表示ラベルや包装機で期限表示する場合は、先程の原材料名表示と同様に、いかに人為的なミスを防ぐかが、重要なポイントになる。できれば手入力で期限表示を入力するのではなく、例えば包装機で期限表示を印字する場合には、システム登録で製品ごとに期限表示を「包装日の 120日後」などと設定すれば、自動計算で印字してくれるものもある。こういったシステムや設定を利用することで、手入力による打ち間違いなどの人為的なミスを減らすこともできるのではないだろうか。
 ただ、こういったシステムを活用したとしても、 最初の設定が間違えていたら意味はないし、また設定が正しくても、表1(※前々回の記事参照)に記載があるような、 記載もれ、貼付もれ、印字不明瞭などが起こる可能性はある。印字不明瞭は、カメラ機能などのシステムで除去することも可能だが、こういったシステムを過信することなく、期限表示が正しいか、 鮮明に印字されているか、最後は食品表示作成時と同様に、人の目でチェックすることが重要だと 思う。
 ここまで卸売業者、製造業者での食品表示の間違いを防ぐための取り組みについて紹介してきたが、これらは一つの例であり、必ずしもベストな方法、正解という訳ではない。各社で正しい食品表示をするためにさまざまな企業努力をされており、より効率的で正確な取り組みをされている方も多くいらっしゃると思う。そんななかでこのようなご紹介をするのは大変恐縮なのだが、それぞれの環境や体制の中で、食品表示の間違いが起こるさまざまなリスクを考慮して、どうすればより効率よく正確な表示作成ができるか、考えて改善 し続けることが重要だと感じている。

この記事を書いたプロ

下裏祐司

事業と社員の成長を導く企業活性化コンサルティングのプロ

下裏祐司(株式会社飛泉)

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