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アフターコロナで食品等事業者のHACCPへの対応が

2023年5月8日

テーマ:HACCP

コラムカテゴリ:ビジネス

 新型コロナウイルスの感染法上の分類が5月8日から、季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げられました。それに伴い、5月8日以降、感染者数の「全数把握」は無くなります。季節性インフルエンザと同じように、全国約5千カ所の指定された「定点医療機関」から、週1回、感染者数などについて報告を受ける「定点把握」に変わります。死亡者数の日々の発表も無くなり、2カ月後に総数、約5カ月後に詳細な死因などが報告されるようになります。

 これまで大きな負担を抱えていた保健所は本来の業務スタイルに戻ることになります。施設への立ち入り調査も正常になるでしょう。
 食品衛生法の改正に基づき、令和3年6月1日からHACCPに沿った衛生管理が制度化され、原則すべての食品等事業者の皆様に「HACCPに沿った衛生管理」に取り組んでいただくことになりました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、実質的に保健所は食品等事業者への確認ができない状態が続いていました。
 今後は、各都道府県が作成する監視指導計画に記された、食品衛生監視員による定期立入検査や営業許可の更新のタイミングで行われる検査で「HACCPへの対応」についての評価もされていきます。

 そもそも、HACCPに沿った衛生管理の制度化では、食品等事業者は業種やその規模に応じて「HACCPに基づく衛生管理」又は「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」のいずれかの衛生管理を実施する必要があります。

  1. 「一般的な衛生管理」及び「HACCPに沿った衛生管理」に関する基準に基づき衛生管理計画を作成し、従業員に周知徹底を図る。
  2. 必要に応じて、清掃・洗浄・消毒や食品の取扱い等について具体的な方法を定めた手順書を作成する。    
  3. 衛生管理の実施状況を記録し、保存する。    
  4. 衛生管理計画及び手順書の効果を定期的に(及び工程に変更が生じた際等に)検証し、必要に応じて内容を見直す。


 一般的な衛生管理を行うにあたって、どんな食品にも共通して以下7つの項目について、「いつ確認するか」「どのように確認」「問題があったときどうするか」を決めます。

①原材料受入時の確認
 ・食材を店舗等に受入れる際に、鮮度、品温、食材が劣化していないか確認します。
②冷蔵庫・冷凍庫の温度確認
 ・食材には、それぞれに適した保管温度が決められており、不適切な温度での保管は、
  細菌の増殖、食材の腐敗につながるため適切な温度での保管徹底が必要なため、
  頻度を決めて温度を確認する必要があります。
③交差汚染・二次汚染防止
 ・保管や調理の際、生肉や生魚介類などから他の食品への有害微生物汚染防止のため
  冷蔵庫内での食材の保管状況の確認やまな板や器具類の洗浄確認が必要となります。
④器具類(まな板や包丁など)の洗浄・消毒・殺菌
 ・調理器具の洗浄や殺菌方法を決め、確実に実施を確認する必要があります。
⑤トイレの洗浄・消毒
 ・トイレの洗浄頻度や石けんや消毒液、ペーパタオルなどの衛生用品の確認や
  補充頻度などを決める必要があります。
⑥従業員の健康管理
 ・手に傷がないかなどの確認します。
⑦衛生的な手洗いの実施
 ・手洗いに関するルールを決めます。

 以上の内容について、計画を記載するのが「衛生管理計画書」であり、保健所の立ち入り調査で確認されます。

 HACCP義務化に伴い、罰則はあるのかが気になるところですが、HACCP導入違反による罰則は食品衛生法自体では定められていません。ただし、HACCPを導入せず、ずさんな衛生管理を行っていた場合には、食品衛生法の罰則規定に該当する場合があります。
 食品衛生法には「3年以下の懲役または300万円以下(法人は1億円以下)の罰金」(食品衛生法第十一章の第七十一条〜第七十九条)という罰則規定が設けられています。なお、具体的な条文の例としては以下が挙げられます。

一 人の健康を損なう可能性がある食品又は添加物を販売などする行為(乳幼児用おもちゃやそれに使う添加物、食品の洗浄に使う薬剤を含む)や疾病が認められる家畜等を使用する行為、承認されていない食品添加物(おもちゃに使う添加物も含む)を使用する行為をした場合
二 新たに販売される食品で安全性が確認できていないものや、一般的に販売されている食品であって問題が発見されたもの等に対して厚生労働省等が判断し販売禁止にすることがあるが、それを破って販売した場合
三 危険性や問題がある食品の廃棄などの命令を守らなかった場合、そして、食品、添加物、器具又は容器包装に関しては、公衆衛生に危害を及ぼすおそれがある虚偽の又は誇大な表示又は広告をしていた場合にそれらの除去のための指示を守らなかった場合、営業禁停止処分を守らずに営業した場合
(食品衛生法 第十一章第七十一条)

 HACCPへの「対応が十分ではない」と評価されると、必要に応じて衛生計画の内容や、施策実施に関する指導・助言が行われることがあります。順番としては、口頭指導、書面指導、行政処分となります。
 
 今後、保健所の検査が順調に行われれば、必ずチェックされる項目でもあります。いつ見られても問題ないよう、HACCPに沿った衛生管理の仕組みを構築し、適切な衛生管理計画書や温度管理等を含む記録表などを用意しなければなりません。しかし、HACCP未対応の事業者は未だ半数ほどあるという調査結果もあります。
 アフターコロナでの食品等事業者のHACCP対応は待ったなしです。弊社ではHACCPに沿った衛生管理への取り組みへの対応も行っております。

この記事を書いたプロ

下裏祐司

事業と社員の成長を導く企業活性化コンサルティングのプロ

下裏祐司(株式会社飛泉)

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