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【知財】【法律】特許の保護対象と民法の関係【専門】

2021年11月7日

テーマ:知的財産

コラムカテゴリ:法律関連

今回は特許法を解釈する上で関連する民法の解説をします。

特許が保護する対象

特許権が何を保護するかは下記条文に明記されています。

特許法第68条
特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。ただし、その特許権について専用実施権を設定したときは、専用実施権者がその特許発明の実施をする権利を専有する範囲については、この限りでない
特許法第2条
この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。
 2 この法律で「特許発明」とは、特許を受けている発明をいう。
 3 この法律で発明について「実施」とは、次に掲げる行為をいう。
  一 物(プログラム等を含む。以下同じ。)の発明にあつては、その物の生産、使用、譲渡等(譲渡及び貸渡しをいい、その物がプログラム等である場合には、電気通信回線を通じた提供を含む。以下同じ。)、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出(譲渡等のための展示を含む。以下同じ。)をする行為
  二 方法の発明にあつては、その方法の使用をする行為
  三 物を生産する方法の発明にあつては、前号に掲げるもののほか、その方法により生産した物の使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
 4 この法律で「プログラム等」とは、プログラム(電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下この項において同じ。)その他電子計算機による処理の用に供する情報であつてプログラムに準ずるものをいう。

上記の条文から保護対象は、特許発明であり、条文上、物・方法・物を生産する方法の3種類があります。
この中で「物」とはどういうものを指すかは特許法でなく、民法の方に定義規定があります。

「物」の定義

民法第85条
物とは有体物をいう。

「物」の分類

分類1:不動産か動産か
 不動産:土地及び定着物 民法第86条第1項
 動産:不動産以外の物 民法第86条第2項
分類2:主物(主物)か従物(じゅうぶつ)
 主物:(明文なし)従物を付属させる物
 従物: 自己の所有に属する他の物をこれに附属させたときは、その附属させた物を従物という。 民法第87条第2項
分類3:元物(げんぶつ、又は、がんぶつ)か果実か
 元物:(明文なし)果実を生じる物 民法第89条第1項等に登場
 果実:元物から生じる収益 天然果実と法定果実に分かれる
 天然果実: 物の用法に従い収取する産出物 民法第88条第1項
 法定果実: 物の使用の対価として受けるべき金銭その他の物 民法第88条第2項

民法の定義からすると、「物」は「有体物」なので、裏返すと「無体物」は対象外ということになります。
そこで、特許法第2条第3項、及び、第4項では「プログラム」を含むと明記するようにし、プログラムも保護対象とする点が明記されています。

実用新案法との違い

実用新案法と特許法では、保護対象が異なります。下記が実用新案法の条文です。
実用新案法第2条
この法律で「考案」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作をいう。
 2 この法律で「登録実用新案」とは、実用新案登録を受けている考案をいう。
 3 この法律で考案について「実施」とは、考案に係る物品を製造し、使用し、譲渡し、貸し渡し、輸出し、若しくは輸入し、又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。以下同じ。)をする行為をいう。

特許法と比較してみますと分かると思いますが、物品にプログラムを追加するような明記がありません。
ゆえに、実用新案法はプログラム、すなわち、ソフトウェア関連発明を保護対象外としています。
そのため、IT関係の技術について権利化を狙う場合には特許権の方が向いているということになります。

ちなみにソースコードは著作物ですので、著作権法の保護対象となります。なお、著作権で保護する方は基本的に世界共通です。
著作権第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
十の二 プログラム 電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したものをいう。
ベルヌ条約
https://www.cric.or.jp/db/treaty/t1_index.html
著作権に関する世界知的所有権機関条約
https://www.cric.or.jp/db/treaty/wch_index.html

外国法との違い

日本国では「プログラム」の請求項が認められていますが、これは国ごとに異なります。
例えば、「プログラム」と明記する請求項はダメですが、「プログラムを記録した記録媒体」ならば「物」なので認めるという国もあります。
条文で可否が定まっている国もあれば、条文上のルールは一見なく、運用上認めるとしている体制の国もあります。
また、法律なので恒久的にその通りということもありません。つまり、改正で近年は認める等という国もあります。
ですので、外国出願・国際出願を検討する場合には、各国で権利化が可能かは念のため最新の法律を確認するのが望ましいです。

上記の内容で不明な点がございましたら、お手数ですがメール等でお問い合わせ下さい。
以上、ご参考まで。

この記事を書いたプロ

坪井央樹

弁理士・中小企業診断士の資格を持つ知財関連の専門家

坪井央樹(武和国際特許事務所)

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