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尾前美幸(おまえみゆき) / 損害調査コンサルタント

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コラム

損害保険金が支払われる条件

2019年8月17日 公開 / 2021年2月24日更新

テーマ:損害保険の知識

コラムカテゴリ:お金・保険

損害保険金支払いの3つの原則


損害保険金の支払いには条件があります。
①偶然に起こった事故であること
②突発的(急激)に起こった事故であること
③外来による事故であること

損害保険金の受取は、上記を全て満たしている必要があります。

ですから故意・重過失は保険金支払いの対象とはなりません。


火災を起こし、隣家に被害を与えた場合


失火法という法律があります。
明治32年につくられた「失火の責任に関する法律」(失火法)があり、次のように定められています。
 
「民法第709条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス。但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス。」
 
つまり重過失でない限りはお隣を延焼しさせてしまっても賠償義務は負わなくていいとなっているのです。
失火については失火者には賠償責任は負わないのです。言い換えれば延焼し類焼(もらい火)で被害を受けても自分の資金で建て直し等をしなくてはいけないのです。


重大な過失についての過去の判例


・電熱器を布団に入れこたつとして使用し火災が発生した例
・寝煙草で火災が発生した例
・主婦が台所のガスコンロに天ぷら油の入った鍋をかけ、中火程度にして台所をはなれたため、過熱された天ぷら油に引火し火災 が発生した例
・電気コンロを点火したまま就寝したところ、ベッドからずり落ちた毛布が電気コンロにたれさがり毛布に引火し火災になった例


賃貸住宅での火災の責任


賃貸物件ではなぜ火災保険に入らなければないのでしょうか?

1戸建て住宅やアパート、マンションを借りていたところ火事を起こしてしまい、借りている家ばかりかお隣も延焼させてしまいました。この場合はお隣に対しては上記の「失火法」は適用されますので、通常なら賠償責任は生じません。

しかし、自分の住んでいた住宅、つまり借りていた住宅はどうでしょうか?。借りたものは返さないといけません。これは火事かどうかとはまったく別の問題です。(民法第415条)

失火責任法は民法第709条に対するものなので、415条の場合は当てはまらないというわけなんです。
つまり貸主は損害の賠償(弁償)を請求することができるのです。

「債務者カ其債務ノ本旨ニ従ヒタル履行ヲ為ササルトキハ債権者ハ其損害ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得 債務者ノ責ニ帰スヘキ事由ニ因リテ履行ヲ為スコト能ハサルニ至リタルトキ亦同シ(第415条)」

「故意又ハ過失ニヨリテ他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス(第709条)」
 
賃借人は十分な賠償資力がないことも多いでしょう。賃貸住宅の入居者には「借家人賠償責任保険」付の火災保険の加入を義務とする不動産会社も多いようです。

なお火災保険では建物と家財を分けて契約しますが、借家の賃借人の火災保険の主契約は家財のみの契約となり、そこに借家人賠償責任保険を付加することになります。
 
つまり自己所有の場合には、自宅からの失火や近隣からの類焼を考えて、建物家財に対して火災保険を考えることになります。
 
賃貸住宅の賃借人については自らの失火や隣家からの類焼、そして貸主への賠償を考えて、貸主への賠償のための借家人賠償責任保険(特約)と家財への火災保険を考えることになるのです。

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