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菊池浩史

「住まい×消費者×教育」のハイブリッドを目指す専門家

菊池浩史(きくちひろし)

住まいの消費者教育研究所

コラム

3K+S

2020年7月11日 公開 / 2021年2月18日更新

コラムカテゴリ:くらし

高齢になると不安なことが多くなってきます。高齢期の三大不安は、健康、経済、孤独の頭文字のKをとって3Kと呼ばれています。2019年に朝日新聞ReライフPROJECTが行った調査では、人生100年時代で最も不安に感じることは、「健康53%」「経済24%」「孤独(つながり、家族)24%」という結果でした。そして経済的な不安は、「医療36%」「介護29%」「住まい17%」の順に大きくなっています。住み替えるにせよ、住み続けるにせよ、高齢期の住まいには経済的な負担が伴うことが分かります。そこで私は、高齢期の不安を「3K+S」と呼んでいます。

高齢者の心身の変化は、他の世代と比べて激しく個人差も大きいのが特徴です。秋山弘子氏の分析によると、男性の心身の変化には三つのパターンがあります。約二割の男性は70歳になる前に健康を損ねて死亡するか、重度の介助が必要となってきます。約一割は80歳、90歳まで自立度を維持でき、大多数の七割は75歳頃から徐々に自立度が落ちていきます。一方の女性は二つのパターンが見られ、約一割の女性は70歳になる前に死亡するか、重度の介助が必要とあり、残りの約九割の女性は70代半ばから緩やかに自立度が低下していきます。男女を合わせると、約8割の高齢者が70代半ばから徐々に衰え始め、何らかのサポートが必要になってきます。しかし注目すべきは、この8割の高齢者は何らかの病気や身体の不具合を抱えながらも、多少の助けや生活上の努力や工夫があれば、一定程度は日常生活を続けることが可能です。これは同時に日常生活のあり方は各人各様であり、自立度は緩やかに低下するとともに変化していくということでもあります。

このため高齢期の住まいへのニーズは多様で、かつそのニーズが変動するため不確実性が一層高まります。自立度が低下すれば、介護保険や健康支援などの生活支援サービスや、住宅のバリアフリーによる移動のしやすさなど、虚弱期や介護期への備えを重視する傾向が高まります。また自立で元気な高齢者であれば、虚弱期や介護期に移行した将来のニーズに加え、立地や生活の利便性、地域との繋がりなど今の暮らしへの満足も当然に無視はできません。

表面的な不安ではなく本質的な不安は何か、どうすればそれに気がつくことができるか、高齢者の方々と真剣にコミュニケーションを図り、そのニーズに応えていこうと思います。

以 上

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菊池浩史

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菊池浩史(住まいの消費者教育研究所)

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