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広いリビングには何畳必要? 新築前に知っておきたい間取りの不思議

2022年9月16日

テーマ:間取り・インテリア

コラムカテゴリ:住宅・建物

コラムキーワード: 注文住宅

新築一戸建ての間取りを検討している皆さんにとって、リビングの広さが何畳必要かは気になるポイントのひとつではないでしょうか。
リビングダイニングキッチンをワンルームとする間取りは新築注文住宅の主流です。
加えて対面キッチンやインテリアの工夫などこだわりは様々あれども、狭くるしくない広いリビング空間に皆さん憧れる事でしょう。
でもそうした広がりを感じさせるリビングを実現するには一体何畳くらい必要なのかとなると、「はて?」と答えに窮するかもしれませんね。
「LDKで16畳は必要です!」
「20畳とかなり広い空間のLDKにしました!」
ハウスメーカーの営業マンから間取りの説明を受けながらも、
「一体何畳だと狭くて、何畳だと広い畳数と言えるの?」
それまでのアパート住まいから新築する多くの方にとって、現居と比較しリビングダイニングの広さも格段に広くなる分、16畳や20畳と言われても空間のイメージが湧いてきづらいかもしれません。
反対に「絶対20畳は必要!」と畳数指定でリビングの広さをリクエストする方もいるはずです。
でも、こうしたリビングの広さを議論する際、何畳であれば広くて何畳に満たなければ狭いと一概に言えない事には注意が必要です。
例えば16畳のリビングと18畳のリビングで広さが逆転する事があるのです。
それは「個人差」といった主観的なものでは無く、もっと物理的な要因として現れます。
「そんな広さが変わるなんてバカな・・・」とお思いでしょう。
リビングの広さと間取りの不思議を今回は取り上げてみたいと思います。


・リビングのゆとりは暮らしのゆとり

広くてゆとりのあるリビング空間にするには何畳必要か
さて、広いリビングが支持されるのはどうしてなのでしょうか?
この答えは新築の住まいを求める動機にも通じるはずです。
例えばこのコラムをご覧になっているあなたの場合はどうでしょう。
「家賃を一生払うのはもったいない」
「いまの家が寒いから、暖かい家に住みたい」
「周りの人達が新築しているから」
勿論、新築のきっかけとなる動機は人により様々でしょうが、多くの方の中に快適な暮らし、新築の住まいでのゆとりのある暮らしへの期待というものが少なからず含まれているのではないでしょうか。
そうした場合の「ゆとりある暮らし」を何で実現するかは当然一様ではないのですが、家族全員の快適さを最大に享受出来る空間となると、やはりリビングの快適性というテーマに行き着くはずです。
何故ならばマイホームの中で家族の利用が最大公約数として集まる場所がリビングであるはずだからです。
各個室ではその部屋を占有する者のみの享受にとどまりますし、バスルームやトイレも家族皆が毎日利用するものの、その稼働時間は限定的です。
だからこそ日々の生活で最もくつろぎの場となるリビング空間にゆとりを求めるのであり、ゆとりに直結する要素として広さの確保がテーマとなるのでしょう。
狭くるしい空間ではゆとりは実感し難いでしょうから。
それでは広いリビングを求める目的を確認したところで本題の「広いリビングには何畳必要か?」の話に移りましょう。

・広いリビングは何畳かだけでは語れない

さて、ゆとりある広いリビングには何畳必要かを考えるにあたり、一言で「ゆとり」と表現しつつも、その意味合いには2つの要素が含まれるのではないでしょうか。
「機能性」と「感性」の観点から見たゆとりです。
また、この両者共に数量的な畳数とこれらの観点から捉えた広さの評価が一致しない場合があるのです。
どういう事なのか?
それぞれについて説明いたします。

機能性と広いリビング  

まずは機能性とリビングの広さの観点とはどのようなものかから始めます。
たとえ数値的な畳数が広いリビングであろうと、その広さが充分機能的に活かしきれない間取りであってはそれが何畳であろうと意味を成しません。
「家具が機能的な位置にレイアウト出来ない」
「その家具の間を縫うような動線」
「その動線とくつろぎゾーンの混在」
こんな要件が重なった間取りのリビングは機能性欠けている状態と言えるでしょう。
日々の生活がバタバタと落ち着かなく、とてもではないがゆとりを充分に享受出来る環境とは言えなくなってしまいます。
でも、こんな間取りはよく見受けられるパターンでもあります。
例えば次のようなリビングも、そういった内のひとつと言えるでしょう。

この間取りはLDK16.3畳のリビングです。
一般的な広さのリビング空間と言えるでしょう。
さて、家具のレイアウトに注目してください。
接続する他の部屋の存在や、必要な窓の寸法と位置どりからしますと、この間取りに対しての家具レイアウトはこうした配置に落ち着くはずです。
この間取りを前提にすれば最も合理的家具レイアウトと言えるでしょう。
しかし・・・・
動線の多くが交錯し、くつろぎゾーンであるはずのソファー周辺が特に集中している事が読み取れます。
絶えずソファーの周辺を家族が往来し、スペース的にも余裕が感じられません。
窮屈さすら感じそうです。
これではゆとりのあるリビングとは中々いきそうにもありません。
次にもう一案ご覧ください。

広さは先程とほぼ同じ畳数のLDKで16畳です。
今度は各動線が交錯せずにスッキリと機能的にまとまっているのが読み取れますね。
リビングゾーンとダイニングキッチンゾーン間の楕円で示した空間にも余裕がありゆとりが感じられます。
ここで挙げた2つの間取りは広さや設置している家具は同様であるにも関わらず、両者の機能性はだいぶ差があるようです。
この様に同じ広さの空間であっても機能性の観点で「広い」「狭い」の評価は必ずしも一致しない事があるのです。

感性と広いリビング

次に感性でリビングの広さはどの様に評価されるかを見ていきましょう。
家具のレイアウト次第で同じ広さのリビングでも機能性に差が生じる事が確認できましたが、多くの方が広いリビングに求めるものは機能性だけでは無いはずです。
視覚的、感覚的な要素も忘れてはいけません。
いわゆる感性で捉えた場合に広いリビングと感じるには何畳くらいの広さが必要かという観点です。
勿論、物理的に見れば何畳であろうと部屋の広さは変わるはずはありません。
あくまでも16畳のLDKは16畳ですし20畳のLDKは20畳であるはずです。
しかし、リビングはあくまでも生活空間です。
室内で過ごす場合には定位置と言えるポジションがあるのではないでしょうか。
例えばリビングにソファーを設置するのであれば、日常の生活シーンはそこに腰を落ち着けテレビを見たり、お茶を飲んだり、雑誌を読んだり、家族と談笑したりといった風景となる事でしょう。
そうなりますと暮らしの定位置であるソファーでくつろいだ時に、そのポジションからの視野がどのような情景となるかによってリビングは広い空間にも狭い空間にも感じ方が変わってくるかもしれません。
これも先程例示した図で解説しましょう。

リビングの家具レイアウトで中心となるのはソファーとテレビの位置関係です。
両者が自然な形で正対できるのが望ましいですね。
また、そうした配置をした場合に定位置となるソファーからの視野がどの様な状態になるかがポイントとなります。
図をもう一度ご覧ください。
ソファーでくつろいだ状態からはLDK全域が視野に入る事が読み取れますね。
つまり16畳の空間を丸ごと部屋の広さとして認識出来るということになります。
それに対して下の図をご覧ください。

なんとなく上の図と似た様な間取りの構成ですが、LDKの広さは18畳とひと回り広い空間となっています。
本来であれば2畳分が加算された分、視覚的にも広い空間が実現出来そうなものです。
しかしながらどうでしょう?
先程と同じ理屈で家具レイアウトを考えていきますと、テレビの配置はこの位置が妥当でしょう。
それと正対する位置が図で描いたソファーの配置ということになります。
この配置でのソファーにくつろいだポジションからの視線に注目下さい。
LDK全体の広さは先程の間取りより2畳分広いはずなのですが、そこからの視野ははるかに狭くなってしまっています。
実質の視野は6畳程度です。
これでは折角の広いリビング空間のゆとりを感性として充分に享受出来ているとは言えないのではないでしょうか。

・リビングの広さをを畳数以上に見せるコツ

実は部屋の広さへの感覚的要素は家具のレイアウトだけで左右される訳ではありません。
更にリビングの広さをを畳数以上に見せるコツがあるのです。
単にリビングが何畳か?といった要素だけでは「広い」「狭い」を一概に判別出来ない事はご理解頂けたと思います。
わずかな間取りの相違でもお部屋の広さの尺度は変わってくるのですが、もう一つ覚えておくと更に広さを演出できるかもしれないのです。
そのコツとは窓の工夫です。
これも図解で説明しましょう。

リビング南面に2つの掃き出し窓が並んでいます。
こうした開口部からの「視線の抜け」はその空間を実際よりも広く見せる点で効果的です。
何畳のリビングであろうと1箇所の窓よりは2箇所、低い窓よりは高さが確保されている窓ほど、広い空間を感じさせる事につながるでしょう。
それならば先程と同じリビング窓を更に工夫してみたらどうなるでしょうか?
窓を大きくするとリビング空間が広く見える
窓の幅、高さ共に広げてみたのがこの図です。
開口部を広げる事でお部屋の印象も開放的に見えるのではないでしょうか。
加えて照明器具も天井直付けのシーリングライトを天井埋め込みのダウンライトで天井をスッキリとさせる事もリビング空間を広く演出するのには効果的です。
この様に平面図上では見落とされがちな窓の広さですが、お部屋が何畳あるかだけでは無く、ここも注意を払いたいポイントですね。

・何畳かでは無くどの様な空間になっているか

広いリビングには何畳必要か?の問いを解明してまいりましたが、どうやら答えは「畳数に左右されない」という所に行き付く様です。
但し、何畳でも良い、という事では無いのはもうお分かりですね。
単なる数値的な広さに幻惑されずに、機能的に狭く不自由の無い様な暮らしへの期待、ゆったりとした落ち着いた気持ちにさせる空間といった環境を満たしたリビングになっているか?
検討している間取り図上で生活シーンをロールプレイングを重ねてみるのが、果たして相応しい広さのリビング空間になっているかを評価する手段として効果的でしょう
「何畳のリビングか?」では無く「どの様な空間になっているか?」を見極め素敵なマイホームを実現したいですね。

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この記事を書いたプロ

栗山琢磨

満足が続く家づくりと家計設計相談のプロ

栗山琢磨(パートナーズライフプランニング)

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