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民法(相続法)の改正 ~婚姻期間20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置について~

2019年2月16日 公開 / 2021年1月8日更新

テーマ:民法(相続法)改正

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 相続対策贈与税相続問題

 今回は、「婚姻期間20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置」について、お伝え致します。
 こちらは、結婚して20年以上経過したご夫婦のどちらかから、その配偶者に対して、お住まいの家又はその土地を生前贈与した場合、その贈与は将来の相続において、「相続財産の先渡し」という扱いにならない、というもので、施行日は2019年7月1日となっております。
 
※具体例にあてはめてみます。
・家族構成 夫 妻 長男 長女 
・夫の財産 自宅 評価額3,000万円
         但し、持分2分の1を夫から妻へ生前贈与していた
         ※この為、夫名義分の評価額1,500万円(2分の1)
      預貯金 3,000万円
・法定相続の割合 妻 :2分の1
         長男:4分の1
         長女:4分の1 
 
 この様な状況で夫が亡くなった場合、その相続財産は次の様に考えます。
  自宅 :3,000万円
  預貯金:3,000万円
  合計 :6,000万円

 夫は、自宅の持ち分2分の1を妻に生前贈与していますので、相続財産における自宅の評価は、半分の1,500万円になるのでは、と思われる方がおられるかもしれませんが、遺言や特別の意思表示をしない状態で亡くなった場合、その生前贈与分も相続財産に組み入れる事が民法で規定されておりまして、これを「特別受益の持ち戻し」といいます。

 特別受益とは、亡くなった方からの遺贈や贈与となる財産をさし、それを受けた方を「特別受益者」といいます。
 民法では、第903条第1項で「共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、~」として、生前贈与として受けた財産を相続財産に加える事を規定しています。
 また続けて、「~算定した相続分の中からその遺贈分又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。」として、生前贈与が相続財産の先渡しとなる事も規定しています。

※例の場合は次の様になります。
・相続財産の総額 6,000万円(生前贈与した財産も含めます)
・相続できる金額 妻 :3,000万円(2分の1)
         長男:1,500万円(4分の1)
         長女:1,500万円(4分の1)
 妻は3,000万円の相続割合がありますが、すでに生前贈与を1,500万円受けていますので、それが相続財産の先渡しとみなされることになります。
 
 妻がこれまで住んでいた自宅を相続致しますと、合わせて3,000万円を相続したことになりますので、預貯金は全く相続出来ないという事になります。
 この場合におきまして、妻に定期的な収入が無い場合は、今後の生活が困窮する可能性もあります。

 これまでは、このような事を防ぐには、遺言やその他の方法で、「妻に生前贈与した自宅の持分は、相続財産から除外して考えて欲しい」という様な、意思表示をする必要がありました。
 
 これを「特別受益の持ち戻しの免除」といいまして、それが第3項の「被相続人が前2項の規定と異なった意思を表示をしたときは、その意思に従う。」という規定です。
 ただ、この規定には、その意思表示の方法が定められていない為、生前の行動や言動がその意思表示に該当するのかどうか、という事が争われる事もありました。

改正によって変わったこと

 今回の改正は、民法第903条に第4項という項目が加えられる形の改正となっております。
 それが「婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第1項の規定を適用しない意思を表示したものと推定する。」という条文となります。

 これによりまして、20年以上の夫婦間で、自宅やその敷地を生前贈与した場合、それに関する意思表示が無くても、それは持ち戻しの免除をしたものとして考える、という事になります。

 これを先の例にあてはめてみます。
・相続財産の総額 4,500万円
         →自宅1,500万円+預貯金3,000万円で、生前贈与した財産を含めません。
・相続できる金額 妻 :2,250万円(2分の1)
         長男:1,125万円(4分の1)
         長女:1,125万円(4分の1)
 妻は、自宅を相続しても、預貯金から750万円を相続することが出来ます。

不動産の生前贈与を検討される際に

 この改正は、一般的にご夫婦の自宅は夫名義の場合が多く、遺された妻が自宅を相続する事で、金銭の相続分が少なくなり、その後の生活に困窮するという事態の発生を防ぐ、“配偶者の保護”を目的としてつくられた改正であると思われますが、それは、同時に「将来の相続で、配偶者が間違いなく家を引き継げるように」という、“生前贈与に託された想い”も補完することになると思われます。

 ただ、不動産の生前贈与には、贈与税に配偶者控除(2,000万円まで)の適用があるものの、名義変更時に課税される「登録免許税」は、将来の相続時よりも税率が高く(0.4%⇒2%)なりますし、相続では課税されない、「不動産取得税」という税金が課税(土地1.5%、建物3%)されるという面もあります。

 不動産の生前贈与を検討される理由の1つには、将来の相続でご家族が揉めない様にという、「相続対策」としてのお気持ちが含まれていることもあるかと思います。
 その場合、不動産だけではなく、その他の財産の引き継ぎ方法なども含め、「どのようにする事が家族にとって一番よいのか」について、ご家族の皆様で話をする機会を持つということも、円満な相続には大切だと考えますが、いかがでしょうか。

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