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民法(相続法)の改正 ~遺産分割前における預貯金債権の払戻し制度について~

2019年4月25日 公開 / 2021年1月8日更新

テーマ:民法(相続法)改正

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 相続 手続き

 今回は、「遺産分割前における預貯金債権の払戻し制度」についてお伝えさせていただきます。
 言い換えますと、「相続の話し合いをする前に、預貯金などの払戻しが受けられる制度」という事になります。
 こちらは、2019年7月1日より施行となっております。

 ご家族の方が亡くなり、相続が発生致しますと、亡くなった方名義の預貯金などの口座は凍結されてしまい、自由にお金を引き出すことは出来ません。
 亡くなった方に有効な遺言があれば、その内容通りに財産を引き継ぐ事が出来ますが、それが無い場合は、預貯金などの解約の為に、多くの金融機関で相続人の方々全員の署名・実印が求められる事になります。
 そうなりますと、相続について全員で協議をする必要があるのですが、誰がどのように相続をするのか、など意見の相違がある場合には、その協議がまとまるまで解約手続きが出来ない事になります。

 そんな場合であっても、亡くなられた方の医療費や施設などの費用の清算、未払いの税金等を支払う必要がありますし、葬儀費用につきましても、その方の預貯金より捻出するお話しで相続人が合意をされていた場合でも、まずご家族の方で先に支払わなければなりません。
 
 今回の改正は、相続人による協議の合意がなくても、預貯金全体の3分の1の範囲内までは、各相続人の法定相続分の割合まで、各相続人が単独で払戻しを求めることが出来る、というものです。
 また、この制度におきまして、「仮払い」という言葉が使われることもありますが、この制度で取得した金銭は、各相続人の方が相続の協議で取得したのと同じ扱いとなります。
 ただし、「1つの金融機関に払戻しを受けられるのは150万円まで」という規定があります。

 民法第909条の2では、次の通りに規定しています。
 「各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の3分1に~当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。=1つの金融機関150万円まで)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。」

払戻しの具体例

 では、どのように払戻しを受けることが出来るのか、具体的にみてみましょう。
  ・亡くなった方 父親
  ・相続人    母親 長男 次男
  ・相続財産   自宅(評価額2,400万円)
          預貯金(1,200万円)
 本来の相続におきましては、相続人である母親・長男・次男で、自宅と預貯金を合わせた3,600万円について協議をする、という事になります。
 
 ○母親が払戻しを受ける場合
  ⇒預貯金1,200万円 × 1/3 × 1/2(法定相続の割合)=200万円
 
 この例ですと、母親は200万円を限度して、長男・次男との協議が合意していなくても、金融機関に払戻しを請求する事が出来る、という事になります。
 (預け先金融機関が1つだけの場合は、150万円となります)

預貯金に関するその他の改正について

 家事事件手続法第200条第3項では、亡くなった方の債務の弁済の為など、預貯金についての払戻しを受ける必要がある場合で、家庭裁判所にその必要性が認められた場合にも、預貯金について仮の取得が認められる、という改定がなされました。

 この他、民法第906条の2では、特定の相続人の方による、亡くなる直前の預貯金引き出しがあった場合、これまでは現存する預貯金についてしか、その後の協議を行えなかった(別途訴訟を提起するなどで対応)のですが、その引き出しをした方を除く全員の相続人の同意があれば、引き出された預貯金も相続財産に含めて協議を行う事が出来る、という改正も行われております。

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