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猪野由紀夫

介護福祉事業の利益拡大を応援する経営コンサルタント

猪野由紀夫(いのゆきお) / 税理士

DCC株式会社

コラム

開業するときに理解しておきたい介護保険制度の仕組み

2019年8月28日 公開 / 2020年1月22日更新

テーマ:介護

コラムカテゴリ:ビジネス

介護保険は40歳以上の国民が保険料を支払い、介護を必要とする人に適した介護サービスを提供することを目的としています。要介護の度合いによって、被保険者は2つの段階の「要支援」と、5つの段階の「要介護」に分類され、段階に応じたサービスを受けることができます。

介護保険の仕組み


介護保険制度は、介護を必要とする人が適切なサービスを受けられるように、社会全体で支え合うことを目的として創設された制度です。1997年に「介護保険法」が制定され、2000年4月から施行されています。

介護保険は、保険料と国や市区町村の税金を運営に充てる仕組みになっています。その比率は1:1で、介護サービスの財源の半分は、税金でまかなわれています。税金部分の負担は、国が25%、都道府県が12.5%、市町村が12.5%です。

40歳になった月からすべての人が介護保険に加入し、支払いの義務が生じます。加入者は65歳以上の「第1号被保険者」と、40歳~64歳までの「第2号被保険者」に分類されています。

第1号被保険者は、市区町村から送られる納付通知書で保険料を納めるか、年金から天引きの形で保険料を支払います。保険料は市区町村によって基準額が異なり、金額は所得に応じて変わります。

第2号被保険者は、厚生労働省が設定した負担率に基づき計算された保険料を収めます。社会保険に加入している人は、医療保険料と一緒に介護保険料が給与から天引きされ、事業主がその半分を負担します。国民健康保険に加入している人の場合は、医療保険料に上乗せする形で介護保険料が請求されます。

第1号被保険者は、介護が必要と認定されると、生活支援や介護サポートなどに対して介護給付を受けることができます。自己負担率は所得によって異なり、1〜3割の範囲内です。

第2号被保険者については、介護給付を受けられる人は限られます。末期がんや関節リウマチ、脳血管疾患といった16種類の特定疾病を原因とする、要介護認定を受けた人のみが対象となります。

介護認定の流れ
介護保険の給付対象となるためには、要介護判定を受ける必要があります。判定の流れをご紹介します。

1.申し込み
市町村の介護保険担当窓口で申請を行います。

2.一次審査
市区町村の係員が訪問し、全国共通の認定調査書を使った調査が行われます。

3.二次審査
保険、医療、福祉の専門家で構成される「介護認定審査会」による審査です。

4.判定
審査の結果が市区町村に通知されます。

要介護認定の審査結果は、介助なしで日常生活を送れる「自立」、介護サービスを利用することで改善が見込まれる「要支援」、自立した生活が困難で何らかの介護を必要とする「要介護」の3種類があります。また、その程度によって要支援は2段階、要介護は5段階に分類されています。

【要支援1】
日常生活の基本的な行動(日常生活動作)であれば、ほぼ自力で行うことができます。しかし、症状の進行を防ぐために「手段的日常動作」と呼ばれる買い物や家事、服薬や金銭の管理などにおいて一部支援が必要な状態です。

【要支援2】
要支援1と比べて、日常生活動作の能力に低下が見られます。身の回りの世話などに何らかの介助を必要とし、立ち上がりや歩行などの際に支えを必要とすることがあります。

【要介護1】
要支援よりさらに日常生活動作の力が低下し、部分的な介護が必要です。立ち上がりや歩行の際にも不安定さがあります。

【要介護2】
要介護1の状態に加えて、日常生活動作にも部分的な介護が必要な状態です。物忘れや理解力の低下も見られます。

【要介護3】
日常生活動作、手段的日常生活動作の両方の能力が低下。食事や入浴を自力で行えないなど、全面的に介護が必要な状態です。

【要介護4】
要介護3と比べてさらに動作能力が低下。1人で排泄をできないなど、介護なしに日常生活を送ることが困難です。

【要介護5】
日常生活動作、手段的日常生活動作の両方の能力が著しく低下。意思の伝達が困難、寝たきりなどにより、生活全般にわたって全面的な介助を必要とする状態です。

要介護度によって保険給付額が変わる
介護保険制度では、要介護の度合いに応じて支給限度額が決められ、ケアマネジャーはこの範囲内で被保険者に合ったケアプランを作成します。

要介護の度合いが高いほど限度額は大きくなりますが、全額を自己負担すれば限度額を超えるサービスを受けることが可能です。
また、介護保険は点数制を採用しており、1点の単価は地域の賃金格差に合わせて10〜11.4円と幅があります。

要介護の度合いによって、受けられるサービスにどのような違いがあるのかを見てみましょう。以下では11点を10円で計算しています。

<要介護度別の支給限度額>
【要支援1】
支給限度額は月額5万30円。この範囲内でケアプランの例を挙げると、週1回の介護予防訪問、月2回のショートステイを利用できます。

【要支援2】
支給限度額は月額10万4,730円。週2回の介護予防訪問、月2回のショートステイ、さらに歩行補助用の杖をはじめとする福祉用具の貸与サービスを受けられます。

【要介護1】
支給限度額は月額16万6,920円。週3回の訪問介護、週2回のデイサービス、週1回の訪問看護、さらに3カ月間に1週間程度のショートステイ、歩行補助の杖など福祉用具の貸与サービスが利用できます。

【要介護2】
支給限度額は月額19万6,160円。週3回の訪問介護、週3回のデイサービス利用、週1回の訪問看護、さらに3カ月間に1週間程度のショートステイ、認知症老人徘徊感知機器など福祉用具の貸与サービスを受けられます。

【要介護3】
支給限度額は月額26万9,310円。週2回の訪問介護、週1回の訪問看護、週3回のデイサービス利用、さらに、毎日1回の夜間の巡回型訪問介護、2カ月間に1週間程度のショートステイ、車いすや特殊寝台といった福祉用具の貸与サービスを受けることもできます。

【要介護4】
支給限度額は月額30万8,060円。週6回の訪問介護、週2回の訪問看護、週1回のデイサービス利用、毎日1回の夜間対応型訪問介護、2カ月の間に1週間程度のショートステイのほか、車いすや特殊寝台などの福祉用具貸与サービスを受けられます。

【要介護5】
介護保険制度の週2回の訪問看護、週1回のデイサービス利用、毎日2回の夜間対応型訪問介護、1カ月間に1週間程度のショートステイに加えて、特殊寝台やエアーマットなど福祉用具の貸与サービスも利用できます。

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猪野由紀夫

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猪野由紀夫(DCC株式会社)

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