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猪野由紀夫

介護福祉事業の利益拡大を応援する経営コンサルタント

猪野由紀夫(いのゆきお) / 税理士

DCC株式会社

コラム

介護事業を運営する中で重要な介護会計とは

2019年8月28日 公開 / 2020年1月22日更新

テーマ:介護

コラムカテゴリ:ビジネス

介護事業の経理は「介護会計」と呼ばれる特殊な会計基準で処理されます。収支を事業所・部門ごとに区分けする必要があり、経理処理には手間がかかります。
この会計基準は実地指導の項目にもなっており、定められた基準で会計を行わないと指導や行政処分の対象になるおそれがあります。

介護会計


介護会計は指定基準のひとつ 
介護事業の経理は、「介護会計」と呼ばれる特殊な会計基準で処理されなければなりません。

一般の業種に比べると手間のかかる方法ですが、実地指導の事前提出書類の「自己点検シート」でも、会計基準はチェック項目となっています。

定められた基準で会計処理を行わないと、運営規程違反に該当して指導対象になり、最悪の場合には指定事業者の取り消しになるおそれもあるので、十分な注意が必要です。

介護会計の基準については、「指定居宅サービス等の事業の人員、設備および運営に関する基準」(平成11年3月31日 厚生省令第三十七号、最終改正:平成24年3月30日厚生労働省令第53号)に定められています。上記の省令で示されている「会計の区分」が、一般的には「介護会計」と呼ばれ、介護事業の会計が“特殊”といわれる理由でもあります。

介護会計の会計処理方式
前項の省令の「会計の区分」には、「指定訪問介護事業者は、指定訪問介護事業所ごとに経理を区分するとともに、指定訪問介護の事業の会計とその他の事業の会計を区分しなければならない」と定められています。つまり、事業所ごと、介護事業以外の業務も行っている場合は業務内容ごとに、別々の会計処理を行わなければならないということです。

この運営基準を満たす会計処理の方式には「会計単位分割方式」「本支店会計方式」「部門補助科目方式」「区分表方式」があります。

【会計単位分割方式】
事業拠点または施設ごと、さらに介護サービス事業の内容ごとに独立した経理処理を行います。仕訳帳、総勘定元帳はもちろん、貸借対照表、損益計算書も別々に作成します。

【本支店会計方式】
事業拠点ごと、介護サービス事業の内容ごとに経理処理を行います。ただし、貸借対照表の資本の部は分離せず、拠点間の取引は本支店勘定となります。

【部門補助科目方式】
勘定科目ごとに定められた補助コードを使い、サービス事業の内容ごとに集計します。貸借対照表については収支損益のみ区分します。

【区分表方式】
仕訳時には区分せず、損益計算書から科目ごとに定められた按分(あんぶん)基準で振り分けます。なお、科目によっては部門補助科目方式を併用することがあります。

どの方式を選択すればいい?
前項の会計処理方式のどれを選択するかは、介護事業者に任されています。ただし、いったん選択すると継続してその方式で処理する必要があるので、選択は慎重に行いたいものです。

前項の4つの会計方式は、会計業務が複雑で難しい順に並んでいます。会計単位分割方式が最も手間を要し、逆に最も簡便に済むのが区分表方式です。

事業の規模が大きく、複数の拠点を抱えている。あるいは、拠点ごとに予算組みをしている事業者の場合は、拠点ごとに会計を行う会計単位分割方式や、本支店方式で適しているといえます。
一方、小規模の事業者の場合は、経理業務の負担をできるだけ少なくするために、部門補助科目方式か区分表方式、または両方を併用するというパターンが適していると考えてよいでしょう。

部門補助科目方式か?区分表方式か?
ここでは、4つの会計基準のなかでも、経理処理が比較的簡単で小規模の介護事業者に適している2つの方法をご紹介します。

ひとつは、区分表方式を採用して、決算期に1年分を一括処理する方法です。

さまざまな方法のなかで最も手間がかからない方法です。ただし、部門の収支状況が判明するのは決算が完了してからです。このため、赤字のセクションがあるなど収支に問題がある場合でも、それが判明するのはかなり後になり、対応が手遅れになるリスクがあります。

そこでおすすめしたいのは、部門補助科目方式を選択して、毎月損益を按分する方法です。
部門補助科目方式にすると、会計ソフトを使ってデータをパソコンに入力する際に、「部門補助コード」を入力するだけで、サービス事業ごとの数値が集計できます。

会計処理の負担が大きく軽減でき、収支の状況を毎月チェックできるので、問題がある場合でも速やかに対応できます。

按分基準についても知っておきたい
会計方式を選択する際に、併せて考えたいのが「按分基準」です。

上記の方式に共通する特徴は、収支を事業所、あるいは部門ごとに算出するということです。「会計の区分」が介護会計の特徴なので、当たり前といえば当たり前です。

この会計の区分の際に問題となってくるのが、収支を複数の事業所、あるいは部門にどのように振り分けるかということです。例えば、水道代、電気代などが一括請求されている場合でも、部門ごとにいくらかかったのかを算出しなければなりません。

こうした振り分けの際に、その方式や比率を定めたものが「按配基準」です。按配基準については次のコラムで詳しく解説する予定です。

また、前出の厚生労働省の省令では、同一の事業者が介護保険の給付対象事業とそれ以外の事業を行っている場合と、介護保険の給付対象事業を複数行っている場合について、区分が必要になると考えられる科目とその按分方法、様式についての参考例が示されています。介護事業の開業を考えている方は、ぜひチ

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猪野由紀夫

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猪野由紀夫(DCC株式会社)

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