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猪野由紀夫

介護福祉事業の利益拡大を応援する経営コンサルタント

猪野由紀夫(いのゆきお) / 税理士

DCC株式会社

コラム

ロボット介護~認知症の徘徊対策に効果が期待

2020年1月22日

テーマ:介護

コラムカテゴリ:医療・病院

(概要)
高齢化が進む現在の日本で、認知症患者の数が増えてきているのはご存じのことと思います。
認知症になると、日時や場所などを正しく認識するための見識力、判断力、さらに記憶の障害や現実検討力の低下などが起こってきます。これらが原因で、認知症患者の徘徊を引き起こしてしまうと言われています。

認知症の介護の中でも、徘徊は家族や介護者にとって大きな問題ですが、その対策のひとつとして効果が期待されているのが見守り介護ロボットです。

(本文)
認知症に伴う徘徊の課題
徘徊は、アルツハイマー型の認知症患者に多く見られる行動です。患者全てに起こる症状ではありませんが、徘徊が始まってしまうと家族や介護者はその対応が難しく、負担は重くなります。

【徘徊の現実】
これまでは、徘徊は意味もなくただ歩き回る行動と言われていましたが、最近では実は本人にとっては理由のある行動であると認識されてきました。

代表的な例としては、自宅にいるのにそれがわからず、若い頃に住んでいた場所に帰ろうとするなどです。当然この認識は正しいものではなく、本人しかわかり得ない理由なので、認知症患者の予測できない行動に周囲の人たちが対応するのは困難です。

高年齢者が見識力や判断力に問題のある状態で、ひとりで出歩くことはとても危険なことです。近年では徘徊によって事故や事件に巻き込まれるケースも増えてきています。

【徘徊に対する介護の課題】
在宅介護では、認知症患者を家族が介護をすることになりますが、徘徊するケースでは24時間体制で見守ることが必要となり、心身共に大変な労力と負担が強いられます。

介護者は「自分の家族だから」という意識が強いこともあり、介護をしているうちに知らず知らず自分自身の心身が疲弊して倒れてしまうことも珍しくありません。

また、認知症の家族をひとり家において外出することもできないので、仕事を持っている人には在宅介護は難しくなってきます。

介護施設やグループホームでも年々人手不足は深刻化。新規採用で人員を補充しても業務の過酷さからすぐに退職してしまい、少ない人数での介護が現実です。

【認知症患者の特徴】

・認知症によって生活パターンが昼夜逆転
・眠りが浅くてわずかな物音で起きてしまう
・夜に眠らずに何度も部屋から出て徘徊する
・夜間にひとりが起床したのをきっかけに、ほかの入居者も行動を始める
・自分の行動に対する認識が低いので転倒リスクも高い
・環境の変化で不安感が高まり気が荒立つ

上記などが挙げられます。家族でも施設の介護スタッフでも、これらに対応する精神的肉体的な負担は計り知れません。

介護全般に言えることですが、いかに必要人員を確保して、介護者の負担を軽減するかが大きな課題です。

徘徊対策として介護ロボットを導入するメリット
認知症患者の介護、特に徘徊対策として、介護者の負担を軽くしてくれるのが見守り介護ロボットです。

見守り介護ロボットの定義には明確なものはありませんが、基本的には、「離れたところから人や部屋の中を見守ることができるロボット」となります。

近年では、見守り介護ロボットは多くの種類があります。

主な機能としては、

・動きを察知するセンサー
・カメラ機能
・遠隔操作機能
・体温や血圧などのバイタル値の測定と管理、報告機能
・自宅にいる人と会話できる人工知能

などで、徘徊する認知症患者を見守るために必要な機能が備わっています。種類によって機能は異なる部分もあるので、どんな認知症患者をどんな場所で、どういう目的で見守りたいのかを考えて導入すればいいでしょう。

多彩な見守り介護ロボットの種類
見守り介護ロボットは基本的に以下の3種類に分けられます。それぞれに認知症患者の症状や場所、費用面を考慮した検討が必要です。適材適所で導入することで、認知症患者を守り、介護者の負担を減らしてくれます。

<室内設置型>
認知症患者のいる部屋の天井などにセンサーを設置して、介護者が携帯するスマートフォンなどに患者の状態を知らせます。

呼吸による微体動を検知する「マイクロ波センサー」や、夜間の暗闇でも状態を検出できる「2次元エリアセンサー」などで認知症患者の“今”を遠隔で伝えてくれるので、どんな状況かを把握した上で、患者の元へ駆けつけることができます。

徘徊だけでなく、患者の状態を全て見守ってくれるのがポイントですが「高額で工事が必要」「介護者が操作方法などを覚える必要がある」ことから、自宅というよりは施設向きの見守り介護ロボットと言えるかもしれません。

また、ベッド型でセンサーによって徘徊を防止するタイプもあり、これは自宅向きと言えます。

<人型介護ロボット>
室内設置型に比べて、価格や操作方法的に自宅で介護をする人でも導入しやすいのが人型介護ロボットです。
センサーやカメラはもちろん、画像認識技術を備えたものもあり、連動するセンサーでスマートフォンなどに通知をしてくれます。

代表的な人型介護ロボットに「palro」「いまイルモ PaPePo i」などがあります。
最新技術を使った人型介護ロボットは見守るだけではなく、認知症患者とおしゃべりなどのコミュニケーションを取ってくれるのが大きなポイントです。

介護ロボットからの声がけで徘徊を防止する効果も期待できます。

<本人携帯型>
認知症患者自身に携帯させて、内蔵した送信機で患者を見守るタイプです。ペンダントとして、またお守り袋に入れることで見た目にも不自然さはありません。

ワイヤレス送信で、介護者のスマートフォンなどに携帯者の居る場所を知らせてくれるので、外に徘徊してしまった場合などに大きく役立ちます。

本人携帯型は子ども用の商品もありますが、認知症患者の症状の度合いによってはそれらを代用することも可能です。

注意したいのは「患者が取ってしまうこと」「誤動作が全くないと言い切れない」という部分です。比較的安価なものもありますが、しっかりとした機能と性能を持った製品を選ぶことが重要です。

この記事を書いたプロ

猪野由紀夫

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猪野由紀夫(DCC株式会社)

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