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太田英之(おおたひでゆき) / 司法書士

クローバー司法書士事務所

コラム

手間や費用が異なる遺言書、種類と特徴を知って自分に合った選択を

2019年12月23日

テーマ:遺言

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 遺言書 書き方遺言書 作成

遺言書には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言などの種類があります。これら3つは普通方式と言い、よく利用されているのは自筆証書遺言と公正証書遺言です。
これら以外にも特別方式といって、死などが差し迫っている状況下で作成する遺言書もあります。今回は、遺言書の種類とその内容についてご説明します。

「普通方式」の遺言

ここで言う「普通方式」とは、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つです。

【1:自筆証書遺言】
遺言書と聞いて、まず思い浮かべるのは、自分で手書きする遺言書「自筆証書遺言」ではないでしょうか。
自分で作成するわけですから費用がかかりませんし、思い立った時に作成できます。また一人で作成するため、遺言書の内容を他人に知られることもありません。

自筆証書遺言にはこうしたメリットがある反面、デメリットもあります。
遺言書には民法で定められた形式があり、形式に不備があった場合には、せっかく遺した遺言書が無効になってしまいます。無効になるとは、法律上の効力がなくなるということです。

また、自筆証書遺言で少なからず問題になるのが紛失です。あるいは火事や水害などによって焼失、紛失してしまう可能性もあります。

【2:公正証書遺言】
公証役場において、証人2人の立ち会いのもと、公証人に遺言内容を口頭で伝え、公証人に作成してもらう遺言書です。

公証人には、元裁判官・検察官など法律の専門家が多く、自筆証書遺言に見られる形式不備などの心配がありません。また、作成された遺言書の原本は公証役場で保管しますから、紛失や偽造などの心配もありません。

証人2人(近しい親族は証人にはなれません)を探さなければならない、手数料がかかる、公証役場まで出向かなければならないなどをデメリットに挙げることができますが、公正証書遺言は最も正確で効力のある遺言書です。

【3:秘密証書遺言】
自筆証書遺言と同じく自分で書き、それを封筒に入れ、公証役場で2人以上の証人、そして、公証人の前で自分の遺言書であることを告げます。公証人が封筒に、遺言者本人の遺言書であること、日付、遺言者の氏名・住所を記載し、公証人、証人、そして、遺言者本人が封筒に署名・捺印します。遺言書の内容を誰にも知られたくない場合に利用される方式です。

例えば公正証書遺言の場合、立会人となった証人から遺言書の内容が漏れるとういうことも考えられなくはないからです(しかし、秘密証書遺言は実際に利用されるケースは稀です)。

「特別方式」の遺言

特別方式の遺言には、「危急時遺言」「隔絶地遺言」の2種類があります。

【1:一般危急時遺言】
一般臨終遺言、死亡危急者遺言とも言いますが、病気やケガなどで死が目前に迫った人が遺言を遺す方法です。

・証人3人以上の立ち会いのもと、そのうちの1人に遺言を口授します。
・口授を受けた証人が筆記します。
・筆記した内容を、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、内容に誤りがないことを確認します。
・各証人が誤りがないことを確認した後、証人3名が署名し印を押します。

この遺言書は、遺言書を作成した日から20日以内に証人の1人または利害関係人が家庭裁判所に提出し、内容や方式に不備のないことの確認を得る必要があります。

【2:難船危急時遺言】
船舶に乗っている際、遭難などによる死亡の危機が迫った人の遺言方式です。

・証人2人の立ち会いのもと、その1人に遺言を口授します。
・口授を受けた証人が筆記をします。
・他の証人が確認(筆記した内容を遺言者、証人に読み聞かせる必要はありません)。
・各証人が署名・捺印(遺言者は不要)。

緊急の際の、簡略化した方式で作成される遺言書であるため、家庭裁判所での確認と審判が必要になります。一般危急時遺言とは違い、いつまでにという明確な規定はありません。遅滞なく確認を請求するよう定められているだけです(しかし、遭難の危機を脱し国内地に上陸してから1カ月程度を基準とすべきという考えもあります)。

【3:伝染病隔離者遺言】
民法では、「伝染病のため行政処分によって交通を断たれた場所に在る者は、警察官一人及び証人一人以上の立ち会いをもって遺言書を作ることができる」と定められています。

条文には「伝染病のため」とありますが、災害等により交通が断たれ隔絶した状態も含むと解されています。
・遺言書を作成し、遺言者、遺言書の筆者、立会人および証人が遺言書に署名、捺印します。

【4:船舶隔絶地遺言】
航海中の船の中で遺言を遺す方法です。船に乗っている状態であれば、その船舶の乗組員ではなく一般の乗客でも問題はありません。

航海中の船舶内で、船長または事務員1人と証人2人以上の立ち会いのもとに遺言書を作成します。事務員とは、航海士、機関長、機関士、また、船舶通信士及び国土交通省令の定めるその他の海員を言います。
・遺言書を作成し、遺言者、遺言書の筆者、立会人および証人が署名、捺印します。

なお、普通方式遺言には有効期限がないのに対し、特別方式遺言は、遺言者が普通方式で遺言を遺すことができるようになってから6カ月以上生存している場合には、遺言書としての効力がなくなります。

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