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浅井知彦

コンクリート住宅設計のプロ

浅井知彦(あさいともひこ) / 一級建築士

レヴォントリ株式会社 一級建築士事務所

コラム

高齢者の家。バリアフリーをどこまで考えて家を建てるか【バリアフリー住宅の設計】

2023年7月24日

テーマ:家を建てるときの新常識

コラムカテゴリ:住宅・建物

建築士が考えるバリアフリーの家について、今回は、

新築住宅を建てるとき、どこまでバリアフリー考えておくべきか

について、書いていきます。


前回はこちらです。

高齢者の家。バリアフリーをどこまで考えて家を建てるか【バリアフリー改築の場合】


家を建てる時、将来を見据えてバリアフリー化した住宅にしたいと考える人も多いかと思います。

私が設計を行った住宅でも、将来両親との同居の可能性を考えた家、自分たちが高齢化したときも住みやすい家など、バリアフリーを設計上考慮して貰いたいという要望がありました。

むしろ今の住宅では、将来のバリアフリーをまったく考えないで家を建てる人の方が少数派ではないでしょうか。


バリアフリー住宅の建築については、昔からいろいろな研究、提案、知見、アイデアがあります。

私が知っているだけでも建築学会等で様々な研究成果や提案がされてきましたし、バリアフリーに対応した実験住宅のようなものも作られてきました。

ハウスメーカーやゼネコンだけではなく、住宅設備メーカーからもリフト、介護バスなど様々なバリアフリー、介護用品を提案、販売されてきました。


このように多方面に展開してきた自宅での介護機器、バリアフリー住宅ですが、最近この状況は大きく変わってきたと私は感じでています。


介護保険制度が自宅介護を施設介護に変えた


家のバリアフリー化に変化をもたらした大きなきっかけは、やはり「介護保険制度」だと思います。

介護についての基本的な考えについて、今までは、
介護は自宅で行う
介護は家族で行う
でしたが、2000年にスタートした介護保険制度とそれを利用したサービスが充実したことで、
介護は社会全体で行う
外部の介護サービスを利用する
という方向に、大きく舵が切られたと感じています。

その結果、個人住宅における大がかりな介護設備は、必ずしも必要で無くなってきました。

たとえば、一時期、個人住宅向けにも売り出されていた「介護浴槽」なども、介護入浴サービスの充実などによって、今はあまり聞かれなくなりました。

使う人の体調次第でいつまで使われるのか判らない大がかりな設備については個人の住宅で所有するのでは無く、必要なときに介護サービス施設で利用すれば良いという考えが広がってきたからだと思います。


介護サービスを利用しやすい家


今、重視される介護住宅のポイントは介護サービスの利用しやすさではないかと思います。


介護保険を使った在宅者向けのサービスの多くは自宅までの送迎があります。

従って、サービスカーに乗り込むことさえ出来れば様々な介護サービスを受けることが出来ます。

つまり、体が不自由になり杖をついていても車椅子に乗っていても、玄関先まですんなり出ることが出来れば問題ないのです。


車椅子通路
今までの考えでは、体が不自由になれば家にこもりがち、家の中での生活がすべてになるという人が多かったかと思います。

そのため「家の中の介護施設の充実」がバリアフリー住宅の基本となっていたのだと思います。

しかし今は、体が不自由になった人こそ様々なサービスを受けるために積極的に外出を促す、そういう社会になってきました。

つまり、家の中のバリアフリーだけでなく、むしろ家から外に出るアプローチ部分のバリアフリーが大事

・・・これがこれからのバリアフリー住宅のポイントになると思います。


これからのバリアフリー住宅の設計


一昔前の家では、床面の高い家が「高級」であるというイメージがありました。

玄関の上がり框は高い方が高級感がありますし、道路からのアプローチを長くとって玄関も一段高くして・・・という構成が高級住宅ではよく用いられてきました。

昔の家の玄関
昔は場所によっては毎年のように浸水する場所がありましたし(今もまったく無くなってはいませんが)、何より木造住宅は土台部分の腐食が一番の弱点でしたから、床下の通風を確保するために充分な床下スペースが必要=高い床が必然とされてきたのです。

実際、建築基準法でも「木造建築物の床の高さは45cm以上にすること」となっています。今までの日本の家は、バリアフリーとは程遠い「大きな段差のある玄関」が普通だったのです。

※※※土台が腐る心配の無い鉄筋コンクリート造や鉄骨造の住宅、木造でも床下をすべてコンクリートで固めた場合にはこのような床の高さの規定はありません※※※

このような「段差が多く床の高い住宅」は、体が不自由な人には外出への大きな負担を強いることになります。

バリアフリーを考えるのであれば、基礎や地盤面の設定など「家の基本構造」まで考えた上で設計を行う必要があります。


前回のコラムで書いたことと合わせて、これからのバリアフリー住宅の基本的な考え方を考えるのであれば、

◇家を介護用に作り込みすぎず、体調の変化に合わせて改変出来るような構造にしておくこと

◇家の中だけでなく外部へのアプローチもバリアフリー対応出来るようにしておくこと

これらを念頭において、設計者と意見を交わしながら将来にわたって住みやすい家を検討していくのが良いと思います。


  ◇ ◇ ◇


家を作るときに考えて欲しいことについて、こちらのページに纏めてみました。

テーマ別コラムのまとめ【ペット/寒さ対策/子育て/地震に強い鉄筋コンクリート住宅など】

興味のある分野があれば、是非、目を通して下さい。


 ◇ ◇ ◇


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