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浅井知彦

コンクリート住宅設計のプロ

浅井知彦(あさいともひこ) / 一級建築士

レヴォントリ株式会社 一級建築士事務所

コラム

高齢者の家。バリアフリーをどこまで考えて家を建てるか【ホームエレベータのある家】

2023年8月12日

テーマ:家を建てるときの新常識

コラムカテゴリ:住宅・建物

建築士が考えるバリアフリーの家、今回は、

ホームエレベータのある家

について、書いていきます。


前回、前々回はこちらです。

高齢者の家。バリアフリーをどこまで考えて家を建てるか【バリアフリー改築の場合】

高齢者の家。バリアフリーをどこまで考えて家を建てるか【バリアフリー住宅の設計】


ホームエレベータのある家を設計しています


ホームエレベータのある家、最近では珍しいものではありません。

モデルハウスを見に行って貰っても、並んでいる家の数棟に一棟くらいはホームエレベータを設置した家が見つけられると思います。

私も過去にホームエレベータのある家を設計しています。

ホームエレベータのある家
この家は鉄筋コンクリート3階建て。眺めの良い3階にリビングや応接室があります。

3階のリビング
エレベータを使えば、プライベートルームのある階を通らずエントランスから直接目的階に行けるので、プライバシー配慮の面でも有利ですね。

ホームエレベータを活用する利点はバリアフリーだけでなく、こういった「家の動線の分離」や「間取りの自由化」にもあると思います。


最新のホームエレベータ


最近のホームエレベータはデザインも洗練されてきています。

ホームエレベータ
写真は三菱日立ホームエレベータのものです。

扉や内装を家のインテリアに合わせて選ぶことが出来ます。


また動作速度もかなり早くなりました。

昔のホームエレベータは法規上の理由でかなり遅い速度になっていましたが、法改正の結果、今は移動速度もずいぶん速くなりました。

今は日常の普段使いでもストレスなく利用することが出来ます。
足腰が弱った人だけでなく、買い物したものを持って上がったするときにも便利ですね。


バリアフリーに有効か


今回のコラムの本題であるホームエレベータはバリアフリーに有効か?ですが、これは確実に効果的であると言えます。

従来、ホームエレベータの設置が難しい場所のバリアフリー対策には「階段昇降機」などがありました。

階段昇降機
写真は新光産業の階段昇降機です。

このような昇降機は「体の不自由な人」以外には利用価値が低いものでしたし、動作速度や乗降のしやすさなどにも難がありました。

後付けでどうしてもスペースがない場合などには有効だったのですが、家を新築する場合などホームエレベータが設置可能であれば、そちらの方がより有効な解決策であると言えます。


ただ、バリアフリー目的でホームエレベータを設置する場合に気をつけてほしいのが「エレベータ以外の導線や間取りにも配慮した設計を行う」ことです。

ハウスメーカーのモデルハウスをみると「とってつけたような」エレベータ配置をしている家が多くあります。

玄関ホールの隅っこに乗り場があり、2階や3階で下りたところには狭い廊下が繋がっている・・・こういう間取りではホームエレベータを充分に活用することは出来ません。

折角、ホームエレベータを設置するのですから、

廊下やフロア構成まで含めたバリアフリー設計

水廻りやリビングなど生活スペース全体を立体的に考える設計

を建築士に要望してください。


実際にエレベータをつけるなら


今までホームエレベータの有効性について書いてきましたが、ホームエレベータの設置は、安いものではありません。

ホームエレベータ設置にいくらかかるのか・・・これは家の階数やエレベータの大きさや仕様にも依るので具体的に「○○万円」と言うわけにはいきませんが、大体「小型の新車を購入するのと同じくらいかかる」と思っておいてください。


また、費用面で確認しておいて貰いたいのが「メンテナンス費用」です。

実はホームエレベータには法定点検の義務がありません。
(業務用エレベータは法定点検と特定行政庁への報告の義務がある)

法定点検義務が無いホームエレベータですが、安全に使って貰うためには定期的なメンテアンスを受けてもらった方が良いと思います。

メンテナンス費用にいくらかかるのかについては、これも契約内容によって値段は変わってきますが、一ヶ月あたり数千円かかると思って頂ければと思います。


もう一点、ホームエレベータを設置する家の構造についてですが、これは設計時に設置することが決まっていれば、基本的にどんな構造でも付けられます。

木造住宅でホームエレベータというのはあまり見たことが無いかもしれませんが、ちゃんと構造計算すれば木造住宅でも取り付け出来ます。

・・・ただこれは個人的な意見ですが、家全体の剛性や揺れを考えた場合、ホームエレベータのある家の構造には、剛性に余裕のある鉄筋コンクリートあるいは重量鉄骨を推奨したいと思います。


既存住宅にホームエレベータは設置できるのか


既存住宅にホームエレベータは取り付けられるのか・・・これについては一言で答えるのが難しい問題ですね。

・家の設計図面が残っているのか
・確認申請、完了検査は受けているのか、構造計算書はあるのか
・そもそも取り付け可能なスペースはあるのか

など、様々な問題が絡んできます。

また、確認申請についても必要な場合と不要な場合がありますし、出来るか出来ないか、一概には言えません。

エレベータリフォーム
既存住宅のエレベータ改修時の写真です。

今までの経験上でいえば、設計時にエレベータの設置を考慮していなかった家にホームエレベータを設置するのは、かなり難しい作業になるというという印象です。

ホームエレベータの設置を検討するようなリフォームであれば、家全体を改造するような「大規模リフォーム」になると思われます。

これについては費用対効果を考えながら、建築士とよく相談し検討していってください。


まとめ


今回のテーマ、高齢者の家、バリアフリーの家にホームエレベータは有効かですが、今まで書いてきたとおり、経験上かなり有効だと思います。

ただしエレベータを付けたからすべて解決、というものではありませんので、家全体でホームエレベータを生かすような設計を心がけて貰えればと思います。


  ◇ ◇ ◇


家を作るときに考えて欲しいことについて、こちらのページに纏めてみました。

テーマ別コラムのまとめ【ペット/寒さ対策/子育て/地震に強い鉄筋コンクリート住宅など】

興味のある分野があれば、是非、目を通して下さい。


 ◇ ◇ ◇


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