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自主回収の報告義務化による変化と 正しい食品表示をするための取り組み (2)

2023年8月31日

テーマ:HACCP

コラムカテゴリ:ビジネス

自主回収理由の傾向

 ここで1つ質問なのだが、下記の2つの自主回収情報があった場合、あなたがより危険と感じるのはどちらだろうか。
①製造工程の中で使用するカッターの刃に破損が見つかり製品に3mm程の金属片が混入した可能性がある
②ミルクチョコレートの箱に誤ってピーナッツ入りのチョコレートを入れてしまった
 ちなみに私自身は、①の方が危険と感じる。②は中身が違うだけで、食べても害はないが、①は口の中を切ったり、飲み込んだ場合は内臓を損傷したりする恐れがあるからだ。
 しかし、特に食品関連事業者の方の中には、②の方が危険と感じる方もいらっしゃるのではないだろうか。
 中身を入れ間違えた際に、一番懸念されるのは、 アレルゲン(アレルギー表示)の違いだ。もちろん中身が違う時点で、原材料名などが間違いということになるので、食品表示法違反になる。それに加えてさらに、製品に含まれているアレルゲンが違うと、アレルギーを持っている方が知らずに食べてしまい、アナフィラキシーショックなどを起こすリスクまで出てくるのだ。
 ②のケースでは、通常はミルクチョコレートには含まれていない、アレルゲンであるピーナッツ(落花生)が入っていることになるので、アレルギー表示が漏れたまま販売されていることになる。さらに落花生は、アナフィラキシーショックなどを起こした際に、重篤な症状になる可能性が高いため、重大な健康危害につながる恐れがあるのだ。
 また、①は健康危害につながる恐れがあるものが1個なのに対して、②は誤って入れたすべての製品が、健康危害につながる恐れがあるという違いもある。最初の質問で①の方が危険と感じた方は、おそらく私と同じで、落花生アレルギーを持っていないのではないだろうか。
 ただ、もしあなた自身が落花生アレルギーを持っていて、仮に①②それぞれ自主回収の対象となる商品が10,000個流通していたとすると、どう感じるだろうか。①の金属片混入の可能性がある製品を喫食する可能性は、流通している10,000個中1個なのに対して、②の落花生が入っているものは、流通している10,000個すべてが、自分にとって健康危害の原因になる。そう考えると、最初の質問の見え方が変わってくるのではないだろうか。
 図1は自主回収の報告義務が完全施行された2021年6月から、2022年2月までの食品の自主回収理由を円グラフにしたものだが、実は食品表示不良による回収が、約66%を占めている。ー番多いのが「不適切な表示」となっているが、その内訳として「アレルゲン」についてが、538件あり、全体の約37%を占めている。表1をご覧いただくと、より詳細な内訳をご確認いただけるが、これは全体の中でも最も多い自主回収理由となっている。先述から、アレルゲンの不適切な表示がなぜ危険であり、自主回収の必要があるかは、ご理解いただけると思う。
 自主回収理由として、2番目に多いのは期限表示の誤記だが、これはいわゆる消費期限、賞味期限の印字間違いなどである。そのなかで最も多い「設定期限を超えて誤記」は、例えば消費期限2022年6月20日の製品に、誤って消費期限2022年7月20日と表示してしまうようなケースだ。お弁当などでイメージしていただくと分かりやすいと思うのだが、もし仮に製造から消費期限まで3日の製品に、誤って製造から33日後の消費期限を表示してしまったらと考えると、食中毒などの健康危害のリスクがどれだけあるかイメージしていただけると思う。
 結論として、こういった食品表示の間違いを防ぐことができれば、自主回収となるリスクを格段に減らすことができるのだ。

食品の自主回収

この記事を書いたプロ

下裏祐司

事業と社員の成長を導く企業活性化コンサルティングのプロ

下裏祐司(株式会社飛泉)

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