マイベストプロ岐阜

コラム

部下とのコミュニケーションの取り方

2023年4月27日

テーマ:社員研修

コラムカテゴリ:ビジネス

 これは、前回の記事「上司とのコミュニケーションの取り方」のミラーイメージになります。すなわち、部下が理解できる「指示の出し方」と部下が「ホウ・レン・ソウ」(報告・連絡・相談)をしやすい環境をつくること、そして部下のやる気を高める指導をすることがポイントとなります。

1.部下への指示の出し方

(1)上手に指示を出すポイント
 一度にたくさん伝えてしまうと、部下は混乱します。一度に伝えることは3つまでと決めておき、部下がメモを取れるように指示を出します。このようにすると、聞き洩らしや伝達ミスを防ぐことができます。一通り指示を出し終えたら、部下に疑問点や不明点がないか、指示したことができるかどうかを確認します。また、指示は思いつくままにするのではなく、事前に部下の負荷を確認し、計画を立ててから出すのがベストです。
 指示は優先順位をつけて出します。あなたが思っている以上に、部下は優先順位がつけられません。優先順位の指示がないと、部下はリーダーに言われた順番に仕事をしようとするか、あるいは勝手な判断をします。指示が複数なら優先順位をつけるべきです。

(2)指示は5W3Hで具体的に出します

 Why なぜそうするのか?(理由)
 What 何をするか?(目的・目標)
 When いつまでに?(期限・約束の時間)
 Who 誰が、誰に?(担当・分担・顧客)
 Where どこで?(場所・行き先)
 How どのような方法で?(方法・手段・仕上げ方)
 How much いくら?(費用)
 How many いくつ?(数量)


2.部下が報告・連絡・相談(ホウ・レン・ソウ)をしやすい環境

(1)声掛けをして、部下と関わり続ける
 指示を出した後、上司は部下がしっかりとできているかを確認し、必要に応じて相談に乗ります。指示を出した仕事を部下が終了するまで関わり続けることが大切です。部下の立場からすれば、上司は仕事の指示を出すものと分かってはいても、「丸投げ・ほったらかし」だと、仕事に対して「やらされ感」が高まるものです。さらに、上司本人が「仕事の指示をしたことを忘れていた」などは最悪で、部下としては一気にやる気がなくなり、上司との信頼関係は破綻します。これを防ぐためにも、上司から部下に働きかけることが大切です。
 タイミングを見計らいながら、上司から部下に「その後、どう?」と声をかけることを忘れないようにしたいものです。

(2)仕事の指示を出すときに進捗報告事項と期限を提示しておく
 頻繁に声をかけるほど、上司には暇はありませんし、部下にとっても時として、プレッシャーがかかることがあります。そこで、最初に指示を出すときに、あらかじめ進捗報告事項と期限を指示しておくとよいでしょう。
 例えば、「指示内容を企画書にまとめて、3日後、報告に来るように。それまでに迷うことがあったら、いつでも遠慮なく相談に来なさい」と伝えます。そして、3日後に報告に来た際に、「次は、○○について、実際に取り掛かるとき(5日後)に」というように、次回のテーマとタイミングを決めておきます。その合間に声をかけると、細やかな進捗把握ができますし、部下の「やらされ感」はぐっと少なくなります。

3.部下のやる気につながる叱り方とほめ方

 部下に対する指示や声がけは、画一的・一方的ではなく、案件の内容と部下個々人の能力・性別・思考パターンなどを考えて、それぞれに適した内容にカスタマイズすることが大切です。
(1)ほめ方
 他人をほめるときのポイントは、「結果承認」「事実承認」「存在承認」の3つです。

①結果承認は、例えば、最終結果を達成したときに、「よくやり遂げた」とほめることです。
②事実承認は、例えば、「この資料、分かりやすくなったね」など、結果に関わらず、その「事実」を言葉にすることです。
③存在承認は、「あなたがいてくれて助かる」「あなたがいるだけで安心する」「あなたと一緒に喜びたい」と相手の存在そのものを認める言葉がけです。

 男性は「結果承認」を求める人が多い傾向にあると言われているため、男性上司の多くは部下をほめるときに、結果承認だけで十分だと思います。逆に、多くの女性が求めているのは「存在承認」なのです。存在承認をされると、「この人のために頑張ろう」とやる気が出るのです。男性でも女性でも「事実承認」を求める傾向は共通しています。

(2)叱り方
 叱り方で注意すべき点は、女性は、相手の表情や語気などから相手の感情を敏感に察する能力が高いということです。「怒鳴る」と「叱る」を勘違いしている男性上司が多いと思われます。「怒鳴る」ことで、多くの女性は委縮し、高圧的・威圧的な叱り方は「パワハラ」と受け取られかねないので注意が必要です。
 怒鳴らずに「叱る」方法は、起こった事実を伝えて「反省してほしい」と伝えればよいのです。また「何でできないのか」と詰問するのではなく、「どうすればできたのか?」と質問すると良いでしょう。叱るという行為は、同じ失敗を繰り返させないためのコミュニケーションです。その叱る手順は、質問を投げかけて相手に考えてもらうことが、失敗から学ぶ指導方法です。叱り方に有効な4つの質問を紹介します。

①何が起きたのか
②本当はどうしたかったのか
③失敗の原因はどこにあるのか
④この失敗を次にどう生かすのか

 こうした叱り方の基本を理解した上で、次の思考パターンに合わせた、ほめ方・叱り方を学んでいきます。

(3)思考パターンに合わせたほめ方・叱り方
 思考パターンに合わせた、ほめ方・叱り方について、以下、例を説明します。(※この思考パターンの詳細は、次回の記事)
①目的志向型をほめる
 このパターンを持つ部下は、仕事に区切りがついたら、結果を適切に評価して、五体的にほめましょう。この時、部下の報告には熱心に耳を傾け、提出された書類にはくまなく目を通します。計画や目標を達成した部下は、上司に仕事の成果をよく理解してほしいものです。成果を十分理解し、納得することが、ほめるために必要な条件です。
②内的基準型を叱る
 このパターンを持つ部下は、基準を自分自身に置く傾向があり、自分の考えを防衛しようとします。したがって、部下の考えを完全否定するような叱り方をしてはいけません。
 あえて、部下の逃げ場を残し、「きみならわかるはずだ」と内省させます。
③外的基準型を叱る
 このパターンを持つ部下は、関心が自分の外を向いており、基準も外に求める傾向があります。したがって、このタイプを叱るときは、部下のミスによる組織やチームに与える影響を考慮した視点で叱ると効果的です。また、周囲の意見に合わせる一面もありますので、「チームの皆が思っている」ことを伝えるだけでも、行動を改善しようとします。
④プロセス型をほめる
 このパターンを持つ部下から仕事の経過報告を受けた際や、途中の様子を見てほめることは、仕事の進め方を承認することになります。これにより部下は安心して作業を続けることができます。また、苦労して悩んでいる場合には、技術的な助言を与えながら、それまでの良かった点や努力を認め、ほめることが仕事への意欲を引き出します。
⑤全体型に仕事の指示を出す
 このパターンを持つ部下は、仕事の指示の際に、「なぜ、この仕事をやる必要があるのか」「この仕事をやることで、本人にとってどんなプラスがあるのか」という全体像を見せながら、しっかりとした動機付けをすることが大切です。

4.部下とのコミュニケーションの実践

【演習】
 顧客からクレームが入りました。どうやら、あなたの女性部下のAさんがミスをしたようです。彼女は外的基準型のパターンを持っています。あなたは彼女をどのように叱りますか?

5.まとめ

 あなたの上司の嫌な行動と同じことを、あなた自身の部下にしていませんか?
 上司の嫌な行動を見つけたら、自分の部下に対する行動を見直してみましょう。
 「部下が理解しやすい指示」「部下が報告しやすい環境」「部下のやる気を高める指導」を心がけていけば、あなたの組織のアウトプットも向上していきます。あなたが部下と話すときは、部下の反応をしっかりと観察し、部下の状況に合わせてコミュニケーションを取ることが大切なのです。








【演習解説】
 あなたの叱り方の例を解説します。
 まずAさんに次の質問をし、Aさんの話をじっくりと聞きます。
①何が起きたのか
②本当はどうしたかったのか
③失敗の原因はどこにあるのか
④この失敗を次にどう生かすのか
 そして、Aさんのミスが組織やチームに与える影響や、組織メンバーがすべて④の改善を望んでいることを伝えます。
 ③と④を繰り返し、問題解決に努めます。
 こうするとAさんは行動を改善しようとします。

この記事を書いたプロ

下裏祐司

事業と社員の成長を導く企業活性化コンサルティングのプロ

下裏祐司(株式会社飛泉)

Share

関連するコラム

下裏祐司プロのコンテンツ

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ岐阜
  3. 岐阜のビジネス
  4. 岐阜の経営コンサルティング
  5. 下裏祐司
  6. コラム一覧
  7. 部下とのコミュニケーションの取り方

© My Best Pro