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コラム

セルフプロデュースマーケティングその2

2022年12月8日

テーマ:新入社員

コラムカテゴリ:ビジネス

 前回、「20歳までに彼氏が欲しい」という目標のため、徹底的に自分を査定し、「勉強のできる真面目くん」タイプなら付き合えそうだと考えた結果、成績で学年1番まで登り詰めた税理士で会社を立ち上げた田村麻美さんのエピソードをお話ししました。
 彼女はそうやって勉強を頑張ったことが基盤になって、高校は埼玉で一番偏差値の高い女子高に入学しました。
 やっと「自分」という商品を評価する五つの指標、「見た目・経済力・学歴・居心地・相性」のうちの「学歴」という武器を身に付けた状態になりました。
 しかし、「商品価値というのは、自分が置かれている環境によって変わってしまう」ということを当時の田村少女は知りませんでした。

「3C分析」というマーケティング用語があります。「カスタマー(Customer=顧客)」「コンペティター(Competitor=競合)」「カンパニー(Company=自社)」の三つで3Cです。
 自分という商品を、他の視点から見た場合にどのように評価されるかを分析するんですね。
 私の中学時代において、「顧客」は先生や親、「競合」は同級生、そして「自社」は自分自身ということです。学年で1番になり「神童」とさえ呼ばれた私、田村少女が県内で1番の進学校に入ってどうなったか。
 その学校には当然、県内各地の中学校で1番だった人たちが集まってきます。そんな中で「田舎での1番」の私と、「市内の中学校での1番」の人とでは雲泥の差がありました。そうなると、「神童」だった私も、また以前の「ただのブス」に成り下がってしまうわけです。
 その現実に直面した私は、自分という「商品」の改良に取り組みました。
 まず、先生や親だった「顧客」を「高校の友だち」に替えました。つまり「高校の友だちにいかに好かれるか」に注力し始めたのです。
 どちらにせよ高校生活は3年間あるわけですから、入ったからには楽しく過ごしたいという思いがありました。
 そのためにはどうしたらいいかなと考え、モノマネなどの一発芸を身につけるに思い至りました。
 その結果、同級生からも、「田村は一緒にいて楽しい」と思ってもらえたようです。そして友だちには本当に仲良くしてもらって、3年間楽しく過ごすことができました。 この時点で私に、「学歴」に加え「面白い」という武器も身についたわけです。
 卒業後、立教大学に合格しました。このとき私は18歳。「20歳までに彼氏をつくる」という第一ゴールを前に、いよいよ決戦が近づいてきました(笑)。
 残り2年という限りある時間の中で、次に市場調査に繰り出しました。
 恋愛における市場調査といえば「合コン」です。これを私は、自分という「商品」の確認をするために何度も行いました。
 大学生になった田村少女は市場調査に繰り出すわけです。「自分を好いてくれる人ってどういう人なんだろう?」と、私は大学からのおよそ10年の間に、いろんな市場に「田村麻美」という商品を投下してみました。
 いろんな人に出会いました。大きく分類すると三タイプに分かれます。 超大手企業でバリバリ出世している「①エリート市場」広告代理店などに勤める華やかで賑やかな「②肉食系市場」研究職など、技術一筋で黙々と仕事をする「③純朴市場」
 当初、私は「エリート市場・肉食系市場」希望でした。でもそのエリート市場だと、私の評価は「頭のいい人だね」という「お友だち」止まりです。
 「肉食系市場」になると、彼らはもう歯牙にもかけません。ある合コンに参加してお手洗いから戻ると、「店員さん、ハイボール三つね」と、店員さんに間違われたこともありました(笑)。
 さてどうしようと思っている時に、③の技術・研究職の方々と食事をする機会がありました。①や②の市場に比べれば、女性に慣れていない方が多かったです。でも積極的に話を振ると楽しく会話できました。
 「私はずっと男性にリードしてもらいたいと思っていたけど、逆も向いてるんだな」と、血を吐くような分析と100回近い市場調査の果てに、私の新たな才覚も見いだしました。
 「よし、今後はこのタイプの男性にフォーカスしていこう」と目標を明確に定め、その後実際に射止め、結婚したのが今の夫です。彼は絵に描いたような純朴市場の人間です(笑)。
 「私」という商品の特性は、結局のところ20年近くの市場調査により、得たものです。中学の時に勉強ができるようになり、高校でその学力は埋もれてしまいましたが、面白いと思ってもらえる芸や傾聴力を身につけることができました。相手にとっての居心地の良さや、お話を引き出すスキルを得たわけです。
 大学を出たので学歴もあります。合コンに明け暮れながらも税理士の資格を頑張って取ったので、経済力も将来困らない程度になりました。
 その上で、私はようやく自分の特性に合った人を見つけたのです。今でこそ面白おかしくこれまでのお話をしていますが、当時は美人であれば決してされないようなひどい扱いに泣いたことも多々ありました。
 それでも腐らず外に出て、「私にぴったりの市場があるはず!」と調査をし続けた結果、やっと行き着いたのが「今」なんです。


 いわゆるビジネスマーケティングでは、あらかじめ「誰に売りたいか」を決めます。
 そして、「その人に買ってもらうためにはどうすべきか」という戦略を練っていくのが定石です。
 しかし、それは時間もお金もかかります。だから手っ取り早く考える順番を変え、「自分を買ってもらえる場所はどこか?」を考えるほうが楽です。
 私が推奨したいのは「一回出してみてダメだったら、違うところに行けばいい」という、臨機応変な「消極的マーケティング」です。
 「選んでもらうために、自分は何ができるか」を、驕(おご)らず謙虚に考え続け、恐れず市場調査をする。あとはプライドを捨てて、「トライ・アンド・エラー」でやっていけばいいのです。
 研修でも、自分には合わないものがあるかもしれません。それでもチャレンジすることです。失敗を恐れず自分の価値を高めるために努力をし、生きる道を切り拓き、自分を改良していっていただきたいと思います。

この記事を書いたプロ

下裏祐司

事業と社員の成長を導く企業活性化コンサルティングのプロ

下裏祐司(株式会社飛泉)

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